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Channel: 北海道美術ネット別館
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■朴多慧展 Park Da-hye (2015年7月15日~ 8月3日、札幌)

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 昨年、朝鮮大学校の大学院を修了したばかりの若手による、日本では初の個展。光州が拠点。
 北海道の美術家たちが昨年、韓国でグループ展を開いたが、その際に渡韓した吉田茂さん(Gallery Retara のオーナーでもある)が高く評価し、札幌での個展を持ちかけたとのことだ。

 作品はキャンバスの上にコンテや木炭でリアルに人の肖像や群像を描いたもの。
 遠目にはモノクロ写真を大きく引き伸ばしたもののように見える。

 案内状に用いられた「human_Dream」(2012)は100号の大作。
 悲しげな老婆の顔がアップになって迫力がある。
 透明なかっぱには、いくつもの雨粒が光り、悲哀を増している。

 吉田さんはこのシリーズを並べる心づもりだったらしいが、100号キャンバスは輸送費が非常に高い。この作品はいったん木枠から外して運び、ほかは、今回の個展のためにわざわざ描き下ろしたものだという。それが「It is not a movie」の3作である。
 これは単独の肖像ではなく、群像を描いている。大人も子供もいる。背景は、白く抜いたままだ。

 アフガニスタン難民の写真をもとに描いたのだそうだ。

 話は戻るが、「human_Dream」は、日韓の間で問題になっている従軍慰安婦の写真がもとになっているらしい。

 ここで急いで付記しておかなくてはならないのは、朴さんはいわゆる「社会派」としてこれらの人物画を制作しているのではない、ということである。
 それよりも、テレビやインターネットにあふれている「イメージ」を再構成し再提出していると見るべきだ。
 (だから、彼女の作品はむしろ、ウォーホルによるマリリン・モンローのシリーズやシンディ・シャーマンの「Untitled」シリーズに近い)
 「It is not a movie」シリーズも、アフガニスタン難民といわれなければ、朝鮮戦争の避難民にも、クリミアの市場が開くのを待っている人にも見える。国際報道にあふれかえっているイメージが、素っ気なく提示されているのだ。

 ウォーホルのシルクスクリーンはどこか作り物めいた印象が漂うが、木炭の肖像画は迫真の力を漂わせる。
 この真実性と、表層的で凡庸なイメージとの距りのなかに、この作品群は位置しているのだと、筆者は思う。



2015年7月15日(水)~ 8月3日(月)正午~午後6時、火曜休み
Gallery Retara(札幌市中央区北1西28)

□ギャラリーレタラのファイル http://moma-place.jp/retara/event_068.html

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