多田さんは札幌の陶芸家。
ふだんは食器などを作っていて、今回はひさびさの造形作品。
会場の手前には花入れや灯入れの作品「秘める」が並んでいます。
時間によって色が変わっていく照明を入れた灯入れは、すき間から光が漏れてなかなか美しいです。
ところどころにあいている穴は、石膏型を作って粘土をあてはめていく手法で制作したとのことです。
とくに、会場中央にそびえる塔のような「放たれし翼たち」が圧巻でした。
白い釉薬がかかっていたり、無釉だったり、傷があったり、穴が開いていたり…。
形状や大きさは似ているものの、表面のようすはさまざまな翼が、いくつもくっついて、うち何個かは天井からつりさげられています。
事前にシミュレーションをたてていたとのことですが、現場での設営は大変だったと、多田さんは振り返っていました。
翼の数はぜんぶで50枚ほどあるそうです。
多田さんは、以前から、翼をイメージさせるようなオブジェやうつわを作っていました。
今回はその集大成のように感じました。
小さいころ手にした、イカロスの絵本が、印象に残っているかもしれない、という意味の話をしていました。
イカロスは、ギリシャ神話の登場人物で、ろうで作った羽根で空を飛ぶことができるようになりましたが、太陽に近づきすぎたために羽根が溶け、墜落してしまったのでした。
わたしたち、現実に生きる人々の翼は、たしかに傷ついています。
しかし、空へ向かう夢だけは、忘れないでいたい。そう思いました。
一方、nakkyさんは、多田さんの中学時代の同級生。
今回は、水面の波紋だけにモティーフを絞り、45枚ほどを並べていました。
個人的には、ギャラリーよりも、喫茶スペースの大型テーブルのコーナーにあったモノクロのストレートフォトのほうが好きでした。
なお、多田さんの陶によるオブジェは、中庭にも設置されていました。
2015年9月5日(土) ~ 13日(日)午前11:00~午後6:00(最終日~午後5:00)、火曜休み
カフェギャラリー 茶廊法邑(ほうむら、札幌市東区本町1の1)
□陶 studio TADA http://studiotada.exblog.jp/
□=この道はいつか来た道= http://regulus.exblog.jp/
■多田昌代 UTSUWA あ・た・た・ま・ろ (2015年2月)
■多田昌代 U・TSU・WA展-やわらかな白・のびやかな黒- (2008)
■多田昌代U・TSU・WA展 (2006)
■多田昌代陶芸展(2006、画像なし)
■下澤敏也・多田昌代二人展(03年、画像なし)