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Channel: 北海道美術ネット別館
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東京2015-2(8)

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(承前)

 このシリーズも、あと残りわずか(のはず)。

 東京国立近代美術館では、藤田嗣治の全点展示をじっくり見て、それはそれで良かったし、行った甲斐があったのだが、同館の「MOMA コレクション」展はほかにも見どころがあって、そちらは駆け足になってしまったことは否めない。
 時間も限られていたのだが、可能であれば、もう少しゆっくりと見たかった。

 とくに、最後の部屋は、Chim ↑ Pom が福島第1原発の近くで撮影したビデオや、村上隆が兵士の模型を使って制作した初期作品「ポリリズム」(たぶん、Perfumeとは関係ない)、岡本太郎や東松照明などが並び、凝縮された力を展示に感じた。
 しかも、別室で上映されていた、高嶺格の代表作「God Bless America」の音声(ひずんだ声の米国国歌)がかすかに聞こえてくるのだ。

 まるで米国の存在自体が、日本の現代史の通奏低音であるという歴史的な現実を、皮肉交じりに鑑賞者に伝えるかのように。
(写真が比較的多く展示されており、その点だけをとっても、地元の美術史をテーマにしながら写真や映像を全く顧みない展覧会を平気で組織するどっかの公立美術館とはえらい違いなんだが、これで川田喜久治「地図」の日の丸の写真があったら完ぺきだと思った)

 順番が前後するが、岸田劉生の有名な「道路と土手と塀(切通之写生)」などもあり、塀と地面の隙間に絵の具の塗り残しのような部分があることなどに気がついた。

 実物を見るって、あらためて、大事だなと痛感した。



 同時開催の「てぶくろ/ろくぶて」も、メルロ=ポンティの文章を案内役というか狂言回しのようにして、「リヴァーシブルについて考える」「私が私にさわる」「一点透視法を疑う」などのテーマで、オブジェ、写真、映像、絵画など約30点を紹介するという、これまた渋い企画で、ちゃんと見る時間がなかったのが惜しまれた。

 美術館を出れば、皇居の上空はすっかり暗い。
 最後の目的地、森美術館へ向かう。

(この項続く) 

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