道教大で彫刻を学び、現在は広島県尾道市で船大工として働いている野上裕之さんが、久しぶりの個展を帰省先の札幌で開いています。
筆者はなかなか野上さんとタイミングが合わず、見ることができなかった展示がいくつもありますが、今回はたまたま開催を知り、ご本人とも実に10年ぶりに会いました。
若手彫刻家だった野上さんは、3児の父親として、地に足を着けた生活者として生きているように、筆者には見えました。
天井を見上げると、藤の木のつるが中空をはい回っています。
「雲のドローイング II」と題したインスタレーションです。
今回の個展に寄せたテキストを野上さんは
「日常的に空を見ることは多い」
という言葉で始めています。
「ふと空を見上げる」
という、日常的でありながら、しかし都市の室内で長い時間を過ごしている人にとっては意外と忘れがちな行為へと、見る人を促しているようでもあります。
ぐにゃりと曲がるつるを目で追っていくことは、空を見上げ続けることにつながります。
吹き抜けの部分には、3個の立体が浮かぶように設置されています。
「赤色矮星」「コメット」などと題されたこれらの作品は、野上さんによると、3人のお子さんを意識して制作したとのこと。
星というよりもイチゴやリンゴなどに見えるのが楽しいです。
そういえば、いま思い出しましたが、2001年に野上さんが作った大きな立体もイチゴの形をしていたっけなあ。
壁や床にも、もちろん作品はあります。
右側の壁には「雲のドローイング I」。
素材は米松、槇、石膏、塗料。
中央の壁には「i(一部)」という鉛の作品。
会場になっているtemporary spaceの看板を思わせる不定形が、さまざまな想像を誘います。
左側にある立体は「船底の眼」。
昨年、本郷新記念札幌彫刻美術館で開かれた「記憶素子 丸山隆と教え子たち」展で展示しました。
古新聞紙がびっしり詰まったたてがみと、真っ赤な顔が印象に残ります。
台座? は、船で使われる木材なのだそうです。
「これ、船首に付ける彫刻じゃないですよね」
と、冗談で聞いたら
「そういう仕事があれば…」
と言われました。
野上さんはもっぱら木材をつかった仕事をしていますが、船体自体は木製が減って、FRP(繊維強化プラスチック)や金属などに取って代わられているそうです。
「船底の眼」の拡大画像。
このほか、木彫の旧作「往環」「おとうさんゆび」が南側の窓辺に、「雲のイメージであろう無題作品」が玄関脇のスペースに、それぞれ展示されています。
最後の画像。カラスのような作品は「世界に告ぐ 空を見ながらたそがれてあくびをするな顎を外すぞ」。
素材は桜とスチール缶。
札幌の旧知の作家が偶然、尾道の画廊で展示をしたことがきっかけとなり、今年はいっしょに東京で展覧会に参加することになりそうとのこと。
21世紀初頭、札幌の美術シーンを盛り上げた作り手には、道教大の学生さんたちが大勢いましたが、その中の一人が、15年以上たって遠く離れた地にありながら、なおも札幌を思い、創作を続けているというのは、なにかとても頼もしいというか、心強く感じられてなりません。
2018年12月27日(木)~2019年1月5日(土)正午~午後3時(27、29、3、5日は午後7時)12月31日と1月1日休み
TEMPORARY SPACE(札幌市北区北16西5)
関連記事へのリンク
temporary spaceの看板
■野上裕之展「i」 (2009)
■Pre-MADE(2008年3月)
■Born in HOKKAIDO 大地に実る、人とアート(2007年11月~08年1月)
■野上裕之彫刻展「nu」(2007年12月~08年1月)
■アートあけぼの冬のプログラム(2006年)
■北海道教育大学札幌校芸術文化課程美術コース卒業制作展 (2003年、画像なし)
■ライジングサン・ロックフェスティバル2002
■地上インスタレーション計画(2001年)
・地下鉄南北線「北18条駅」から約430メートル、徒歩6分
・中央バス「北18条西5丁目」から約290メートル、徒歩4分
筆者はなかなか野上さんとタイミングが合わず、見ることができなかった展示がいくつもありますが、今回はたまたま開催を知り、ご本人とも実に10年ぶりに会いました。
若手彫刻家だった野上さんは、3児の父親として、地に足を着けた生活者として生きているように、筆者には見えました。
天井を見上げると、藤の木のつるが中空をはい回っています。
「雲のドローイング II」と題したインスタレーションです。
今回の個展に寄せたテキストを野上さんは
「日常的に空を見ることは多い」
という言葉で始めています。
「ふと空を見上げる」
という、日常的でありながら、しかし都市の室内で長い時間を過ごしている人にとっては意外と忘れがちな行為へと、見る人を促しているようでもあります。
ぐにゃりと曲がるつるを目で追っていくことは、空を見上げ続けることにつながります。
吹き抜けの部分には、3個の立体が浮かぶように設置されています。
「赤色矮星」「コメット」などと題されたこれらの作品は、野上さんによると、3人のお子さんを意識して制作したとのこと。
星というよりもイチゴやリンゴなどに見えるのが楽しいです。
そういえば、いま思い出しましたが、2001年に野上さんが作った大きな立体もイチゴの形をしていたっけなあ。
壁や床にも、もちろん作品はあります。
右側の壁には「雲のドローイング I」。
素材は米松、槇、石膏、塗料。
中央の壁には「i(一部)」という鉛の作品。
会場になっているtemporary spaceの看板を思わせる不定形が、さまざまな想像を誘います。
左側にある立体は「船底の眼」。
昨年、本郷新記念札幌彫刻美術館で開かれた「記憶素子 丸山隆と教え子たち」展で展示しました。
古新聞紙がびっしり詰まったたてがみと、真っ赤な顔が印象に残ります。
台座? は、船で使われる木材なのだそうです。
「これ、船首に付ける彫刻じゃないですよね」
と、冗談で聞いたら
「そういう仕事があれば…」
と言われました。
野上さんはもっぱら木材をつかった仕事をしていますが、船体自体は木製が減って、FRP(繊維強化プラスチック)や金属などに取って代わられているそうです。
「船底の眼」の拡大画像。
このほか、木彫の旧作「往環」「おとうさんゆび」が南側の窓辺に、「雲のイメージであろう無題作品」が玄関脇のスペースに、それぞれ展示されています。
最後の画像。カラスのような作品は「世界に告ぐ 空を見ながらたそがれてあくびをするな顎を外すぞ」。
素材は桜とスチール缶。
札幌の旧知の作家が偶然、尾道の画廊で展示をしたことがきっかけとなり、今年はいっしょに東京で展覧会に参加することになりそうとのこと。
21世紀初頭、札幌の美術シーンを盛り上げた作り手には、道教大の学生さんたちが大勢いましたが、その中の一人が、15年以上たって遠く離れた地にありながら、なおも札幌を思い、創作を続けているというのは、なにかとても頼もしいというか、心強く感じられてなりません。
2018年12月27日(木)~2019年1月5日(土)正午~午後3時(27、29、3、5日は午後7時)12月31日と1月1日休み
TEMPORARY SPACE(札幌市北区北16西5)
関連記事へのリンク
temporary spaceの看板
■野上裕之展「i」 (2009)
■Pre-MADE(2008年3月)
■Born in HOKKAIDO 大地に実る、人とアート(2007年11月~08年1月)
■野上裕之彫刻展「nu」(2007年12月~08年1月)
■アートあけぼの冬のプログラム(2006年)
■北海道教育大学札幌校芸術文化課程美術コース卒業制作展 (2003年、画像なし)
■ライジングサン・ロックフェスティバル2002
■地上インスタレーション計画(2001年)
・地下鉄南北線「北18条駅」から約430メートル、徒歩6分
・中央バス「北18条西5丁目」から約290メートル、徒歩4分