全5室で開催中の群青ぐんせい展・前期のうち、6階のB室は、札幌の写真家伊藤也寸志さんの個展になっている。
今回は、2010年から18年までの間に撮影されたカラー25点。
すべて横位置で、1点ずつ額装されている。
筆者の見方では、伊藤さんは、街撮りの達人である。
「写真都市」と題したブログに、撮影してきた街の風景を毎日アップしている。
ブログで見られる写真の多くは、住んでいる札幌、あるいは東京や栃木など住んでいた都市の風景だが、今回は「それらの場所からちょっと離れた場所へ旅に出た時のものをまとめたもの」となっている。
写真展タイトルの「ここではないどこか」は、それに由来するのだろう(本人に確認したわけではないが、GLAYの「ここではない、どこかへ」と乃木坂46の「ここじゃないどこか」の2曲の題を踏まえている可能性は高い)。
先ほど「街撮りの達人である」と述べたが、彼の写真の良さを手短に言うことはけっこう難しい。
ネイチャーでも、人物でもない都市の写真をひたすら撮っている人は、それほど多くはない。
古い建物にレンズを向けることは少なくないが、いわゆる廃墟マニアとは異なり、感情的な迫り方はしない。
「失われゆく街路を惜しみつつ」
というような思い入れとはあまり縁がなさそうなのだ。
鮮やかな夕景とか、美しい桜並木などを、撮影しないわけではないが、とりたてて狙っているということもない。
これは、伊藤さんが古い建物や美しい風景に興味がないということを言っているのではなく、あくまで撮影の手法のようなものだ。
かといって、ベッヒャー夫妻に代表される、即物性に満ちた作風とも少し違うように感じる。
ただ、淡々と、熱くも冷たくもならずに、都市風景への愛着をひそかに抱きながら、シャッターを押し続けている。
その結果が「端正」ともいえる、数々の写真なのだ。
「18-09-17 北海道白老町」は、ドライブインの駐車場とおぼしき場所に集う人々を遠くからとらえた一枚。
傘を差している女性がいるので、植田正治の代表作を思い出させる。
「14-10-15 北海道滝川市」。
三菱系カーディーラー?の古い看板に「ランサー」「ギャランΣ」。その前を少女が歩いていく。
地方都市のディーラーや修理工場は、大きなガラス窓を備えた立派な建物が多い大都市に比べ、農家の軽トラックを売るのが主な仕事だったりするので、古い建物が多い。
このほか、洗車の水を浴びている中央バス(留萌)、閉店したバー(室蘭)、地下鉄なのに高架を走る丸ノ内線後楽園駅(東京都文京区)、西鉄の電車やバス(福岡市)など、とりたてて絶景が写っているわけでもないのに、印象に残る写真が多い。
石狩、広島県呉市、小樽、那覇、千歳、千葉県市川市、同銚子市などもあるが、とくにローカリティを強調しているわけでもない。
ここにうつっている建物も、いつの日か姿を消していくのだろう。
そう思うと、不思議な気分に包まれるのだ。
2019年1月24日(木)~29日(火)午前10時~午後7時(最終日~6時)
アートスペース201(札幌市中央区南2西1 山口中央ビル6階)
※群青展は5、6階
□ブログ「写真都市」 http://blog.livedoor.jp/ya5u5hi/
関連記事へのリンク
■第5回丸島均(栄通記)企画 群青 後期(2018)
■都市標本図鑑 (2017)
札幌綺譚による「石狩は秋」
■ winter scene from west -美風西来- (西区文化フェスタ参加プログラム)=2016
■写真都市 札幌 伊藤也寸志写真展 (2014、画像なし)
■写真都市sapporo 伊藤也寸志写真展 (2008)
■北海学園大学写真部写真展(07年10月、画像なし)
■EX 6(07年4月)
■ある二人 鈴木絢子・伊藤也寸志二人展(07年2月)
■micro.復活写真展 第一週(06年)
(この項続く)
今回は、2010年から18年までの間に撮影されたカラー25点。
すべて横位置で、1点ずつ額装されている。
筆者の見方では、伊藤さんは、街撮りの達人である。
「写真都市」と題したブログに、撮影してきた街の風景を毎日アップしている。
ブログで見られる写真の多くは、住んでいる札幌、あるいは東京や栃木など住んでいた都市の風景だが、今回は「それらの場所からちょっと離れた場所へ旅に出た時のものをまとめたもの」となっている。
写真展タイトルの「ここではないどこか」は、それに由来するのだろう(本人に確認したわけではないが、GLAYの「ここではない、どこかへ」と乃木坂46の「ここじゃないどこか」の2曲の題を踏まえている可能性は高い)。
先ほど「街撮りの達人である」と述べたが、彼の写真の良さを手短に言うことはけっこう難しい。
ネイチャーでも、人物でもない都市の写真をひたすら撮っている人は、それほど多くはない。
古い建物にレンズを向けることは少なくないが、いわゆる廃墟マニアとは異なり、感情的な迫り方はしない。
「失われゆく街路を惜しみつつ」
というような思い入れとはあまり縁がなさそうなのだ。
鮮やかな夕景とか、美しい桜並木などを、撮影しないわけではないが、とりたてて狙っているということもない。
これは、伊藤さんが古い建物や美しい風景に興味がないということを言っているのではなく、あくまで撮影の手法のようなものだ。
かといって、ベッヒャー夫妻に代表される、即物性に満ちた作風とも少し違うように感じる。
ただ、淡々と、熱くも冷たくもならずに、都市風景への愛着をひそかに抱きながら、シャッターを押し続けている。
その結果が「端正」ともいえる、数々の写真なのだ。
「18-09-17 北海道白老町」は、ドライブインの駐車場とおぼしき場所に集う人々を遠くからとらえた一枚。
傘を差している女性がいるので、植田正治の代表作を思い出させる。
「14-10-15 北海道滝川市」。
三菱系カーディーラー?の古い看板に「ランサー」「ギャランΣ」。その前を少女が歩いていく。
地方都市のディーラーや修理工場は、大きなガラス窓を備えた立派な建物が多い大都市に比べ、農家の軽トラックを売るのが主な仕事だったりするので、古い建物が多い。
このほか、洗車の水を浴びている中央バス(留萌)、閉店したバー(室蘭)、地下鉄なのに高架を走る丸ノ内線後楽園駅(東京都文京区)、西鉄の電車やバス(福岡市)など、とりたてて絶景が写っているわけでもないのに、印象に残る写真が多い。
石狩、広島県呉市、小樽、那覇、千歳、千葉県市川市、同銚子市などもあるが、とくにローカリティを強調しているわけでもない。
ここにうつっている建物も、いつの日か姿を消していくのだろう。
そう思うと、不思議な気分に包まれるのだ。
2019年1月24日(木)~29日(火)午前10時~午後7時(最終日~6時)
アートスペース201(札幌市中央区南2西1 山口中央ビル6階)
※群青展は5、6階
□ブログ「写真都市」 http://blog.livedoor.jp/ya5u5hi/
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■写真都市 札幌 伊藤也寸志写真展 (2014、画像なし)
■写真都市sapporo 伊藤也寸志写真展 (2008)
■北海学園大学写真部写真展(07年10月、画像なし)
■EX 6(07年4月)
■ある二人 鈴木絢子・伊藤也寸志二人展(07年2月)
■micro.復活写真展 第一週(06年)
(この項続く)