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■ワビサビ結成20周年展「ワビサビはどこから来たのか? ワビサビは何者か? ワビサビはどこへ行くのか?」 (2019年1月19~30日、札幌)

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 いや~、楽しかった。
 「ワビサビ」は1999年、広告代理店のアートディレクター「工藤“ワビ”良平」さんとデザインプロダクションのグラフィックデザイナー「中西“サビ”一志」さんが結成したデザインコンビ。
 プロフィルによれば

札幌を拠点にアドバタイジングから、グラフィックデザイン、オブジェ、映像、ファッション、インテリアまで多方面での制作を行っている。

とのこと。ニューヨークの賞など、国内外で多数の受賞があります。
 結成20年ということで、2人が手がけてきたさまざまな仕事から厳選して紹介しています。
 AIRDO(エアドゥ)の巨大ポスター、「飾り罫」で描いた福岡空港のYOSHIMIレストランの壁やNIKEポスター、さらに、図録(2千円です)の表紙にもなっているフォント「ホルモン」を応用したいろんなグラフィクスなどなど。
 会社や団体のロゴマークや、ジャケットをデザインしたCDなども多数あり、会場中央部のスペースには「HERE MAN」シリーズや「METALOOK」シリーズなどの絵画っぽい(としかいいようがない)作品も展示されています。

 全体に、キャプションがちょっと長い!
 でも、どの文章もおもしろいので、飽きません。
 作品は遊び心に富んだものが多いです。
 構成も、天井からこいのぼりみたいな作品をつり下げたり、それほど広くないが天井は高い会場の特性をうまく生かしていると思いました。

 日本を代表するグラフィックデザイナーの葛西薫さんが祝辞のような文章を寄せて

 代名詞とも言えるあの臓物のような迷彩にクラクラさせられ、和英混交書道の達筆、流麗な飾り罫による盆栽やらギターに意味国籍不明の異国情緒を味わう。エアボンサイに至ってはその能天気なデザインに爆笑してしまった。細部は執拗で緻密なのに全体にどこかとぼけている。

と書いていましたが、これに付け加えることはあまりないと思います。


 …とはいえ、これで終わっても芸がないので、ちょっと補足。

 全体を見ると、やっぱり発想がデザイナーだなあ~と感じました。
 アーティストは、まずは自分のために作品をつくる。しかしデザイナーは、クライアントの存在が前提になっているんですね。当たり前ですが。
 ワビサビというユニットは、仕事を離れてインディーズバンドのようなことをしたいーというのが動機になっているようですし、今回の展示物にも
「これ、いったいどうするつもりだったの?」
という作品がいくつかあるのですが、それでも基本は、そのデザインがお客さんにどう使われるかというところにあると思います。
(もちろん、どちらが良いとか悪いとかという問題ではありません)

 もう一つ。
 会場のはじめに、札幌を代表するファンションビルとして知られる「4丁目プラザ」のポスターなどが貼ってありました。
 ワビサビの始動前に2人が組んだ仕事ですが、このころまでは、アドバタイジングもグラフィックデザインも、こういうポスターの占める地位が高かったような印象があります。ここで使われるイメージは、ポスター単体だけでなく、新聞の夕刊最終面にも用いられていました。夕刊テレビ欄の下の大型広告は、デパートなどが曜日ごとに出稿し、グラフィックデザインの花形的存在だったと思います。
 この頃から比べると、デザイナーの仕事は激変したといっていいでしょう。ワビサビの2人はその激変をかいくぐってきたわけで、それを思うと、感慨も増してきます。



2019年1月19日(土)~ 30日(水)午前10時~午後7時(入場は15分前まで)、会期中無休
札幌文化芸術交流センター SCARTS SCARTSコート(札幌市中央区北1西1 札幌創世スクエア)

http://www.deza-in.jp/wabisabi.html


関連記事へのリンク
ワビサビ展「HERE MAN」 (2017)
開廊5周年記念「超日本」展 (2017)


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