本田滋さんは札幌の何気ない街角や石狩方面の風景を、独特の色使いで描き続けている。
いわゆる絵はがき的な絶景ではなく、日常で出あうありふれた風景が多い。
スナップショットのようでもあるが、写真と違うのは、その色彩やタッチはもちろん、いろいろなところに三角形などの響きあいを見つけてしまう本田さんの視線の存在だと思う。
冒頭画像は「滞氷の春近し」。
勝納カツナイ橋から小樽港に注ぐ河口を描いている。以前、石原裕次郎記念館のあった近くである。
川の水面が凍っているあたりに、さまざまな色班を、隠し味のようにひそませている。
氷を目立たせるため「空の色は目立たないようにした」とのこと。
アクセントになっているのは、コンクリートの2本の腕の間を結んでいる、だいだい色の浮きの連なり。氷が港に侵入するのを防ぐために設置されているのだろう。
昨年の第42回日輝展(東京都美術館)の出品作。F40で、今回の出品作では最大。
「発寒川冬景色」(F30)。
正式名称は琴似発寒コトニハッサム川だが、地元の人は単に「発寒川」と呼ぶことが多い。
水面よりも、雪が積もった河川敷の面積を多くとって描いている。
ここでのアクセントもやはりオレンジ色。ギャラリー山の手に近い「ふもと橋」であろう。雪景色だけに、この鮮やかな色がいっそう映える。
これが、夕方の空の色と呼応しているのだ。夏の南国のぎらぎらした夕焼けではなく、北国の冬らしい淡い色合いだ。
さらに空の色は、川面にかすかに反射している。この川の流れは、一般的な風景画とは反対に、画面奥から手前へと見る人の視線を誘導しているかのようだ。
右は「無煙浜への序曲」(P10)。
ここ数年、本田さんは、画面の天地に黒い帯を描き加えて、横長の構図を作り出す―ということをしばしば試みている。黒という色自体に、全体を引き締める効果もある。
無煙浜は、石狩市厚田区聚富(シップ。シュップとも)あたりの海岸。遠くに小屋が描かれ、道は舗装されていない。かつてニシン漁でにぎわったであろう海沿いには、人間の住んだ痕跡は残っているが、いまはわびしさの感じられるたたずまいである。
そのとなりは「雨上がりの秋色」(F3)。
大通公園3丁目で、足元の水たまりにふと目をやった、スナップ的な作品。
この絵だけでなく、今回は大通公園に取材した絵がいつになく多い。
「茨戸夕映え」(F6)
茨戸バラ ト は札幌市北端の地名。茨戸川(旧石狩川)に創成川や発寒川、伏籠フシ コ 川などが注ぐ、いわば「札幌の水郷」とも呼べるところだ。
石狩へと続く国道231号の街灯が水面に反射している。
ゆうゆうと流れる川にはボートのようなものも見える。
夕暮れらしいやさしい色あいが、画面全体に満ちている。
冒頭の「滞氷の春近し」について本田さんは
「このような光景はいつ行っても見られるわけではない。氷が解けかかっているこの季節だけなんです。そういう意味では『出会い』ですし、風景に感謝しなくてはいけませんね」
と笑顔で話す。
こういう心持ちが、画面に反映しているのかもしれないと思う。
他の出品作は次のとおり。
色のついている作品17点はすべてアクリルガッシュ。描かれた場所の地名を添えてみた(石狩以外はすべて札幌市内)。
黄葉輝く(サムホール、中央区北6西14)
黄彩の街角(M8、同大通西3)
ギャラリーを出てみる(F3、同大通西5と資料にはあるが実際には南2東6では?)
八剣山の春便り(F4、南区簾舞ミスマイ)
幌都を見つめて(F3、中央区大通西1)
輝秋の学び舎(F4、北区北16西2)
涼夏の大通公園(F6、中央区大通西4)
春風の農試公園(F10、西区八軒4の6)
樹影の街角(F]10、中央区北1西6)
石狩河口はもう真ママ近(F6、石狩市厚田区聚富)
夏照の大通公園(F10、中央区大通西5)
秋陽の輝き(F30、中央区大通西6)
ボールペン・淡彩が4点。
2019年2月6日(水)~11日(月)午前10時~午後10時(土日月~午後7時、最終日展示~午後5時)
カフェ北都館ギャラリー(札幌市西区琴似3の1)
関連記事へのリンク
■風の彩 本田滋絵画展≪きままな風 明日向けて≫ (2018)
■街 Crossing 中橋修×本田滋 (2016)
■風の彩・本田滋絵画展《風の声を聴こう》 (2015)
■風の彩~本田滋絵画展― (2015年2月)
■本田滋絵画展 (2014)
■風の彩・本田滋絵画展《風色の街・ハミングの歌》 (2014年1月)
■本田滋「風の街」展 北の街角をふりかえると・・・ (2009)
■上砂川・北の創造者達展07
いわゆる絵はがき的な絶景ではなく、日常で出あうありふれた風景が多い。
スナップショットのようでもあるが、写真と違うのは、その色彩やタッチはもちろん、いろいろなところに三角形などの響きあいを見つけてしまう本田さんの視線の存在だと思う。
冒頭画像は「滞氷の春近し」。
勝納カツナイ橋から小樽港に注ぐ河口を描いている。以前、石原裕次郎記念館のあった近くである。
川の水面が凍っているあたりに、さまざまな色班を、隠し味のようにひそませている。
氷を目立たせるため「空の色は目立たないようにした」とのこと。
アクセントになっているのは、コンクリートの2本の腕の間を結んでいる、だいだい色の浮きの連なり。氷が港に侵入するのを防ぐために設置されているのだろう。
昨年の第42回日輝展(東京都美術館)の出品作。F40で、今回の出品作では最大。
「発寒川冬景色」(F30)。
正式名称は琴似発寒コトニハッサム川だが、地元の人は単に「発寒川」と呼ぶことが多い。
水面よりも、雪が積もった河川敷の面積を多くとって描いている。
ここでのアクセントもやはりオレンジ色。ギャラリー山の手に近い「ふもと橋」であろう。雪景色だけに、この鮮やかな色がいっそう映える。
これが、夕方の空の色と呼応しているのだ。夏の南国のぎらぎらした夕焼けではなく、北国の冬らしい淡い色合いだ。
さらに空の色は、川面にかすかに反射している。この川の流れは、一般的な風景画とは反対に、画面奥から手前へと見る人の視線を誘導しているかのようだ。
右は「無煙浜への序曲」(P10)。
ここ数年、本田さんは、画面の天地に黒い帯を描き加えて、横長の構図を作り出す―ということをしばしば試みている。黒という色自体に、全体を引き締める効果もある。
無煙浜は、石狩市厚田区聚富(シップ。シュップとも)あたりの海岸。遠くに小屋が描かれ、道は舗装されていない。かつてニシン漁でにぎわったであろう海沿いには、人間の住んだ痕跡は残っているが、いまはわびしさの感じられるたたずまいである。
そのとなりは「雨上がりの秋色」(F3)。
大通公園3丁目で、足元の水たまりにふと目をやった、スナップ的な作品。
この絵だけでなく、今回は大通公園に取材した絵がいつになく多い。
「茨戸夕映え」(F6)
茨戸バラ ト は札幌市北端の地名。茨戸川(旧石狩川)に創成川や発寒川、伏籠フシ コ 川などが注ぐ、いわば「札幌の水郷」とも呼べるところだ。
石狩へと続く国道231号の街灯が水面に反射している。
ゆうゆうと流れる川にはボートのようなものも見える。
夕暮れらしいやさしい色あいが、画面全体に満ちている。
冒頭の「滞氷の春近し」について本田さんは
「このような光景はいつ行っても見られるわけではない。氷が解けかかっているこの季節だけなんです。そういう意味では『出会い』ですし、風景に感謝しなくてはいけませんね」
と笑顔で話す。
こういう心持ちが、画面に反映しているのかもしれないと思う。
他の出品作は次のとおり。
色のついている作品17点はすべてアクリルガッシュ。描かれた場所の地名を添えてみた(石狩以外はすべて札幌市内)。
黄葉輝く(サムホール、中央区北6西14)
黄彩の街角(M8、同大通西3)
ギャラリーを出てみる(F3、同大通西5と資料にはあるが実際には南2東6では?)
八剣山の春便り(F4、南区簾舞ミスマイ)
幌都を見つめて(F3、中央区大通西1)
輝秋の学び舎(F4、北区北16西2)
涼夏の大通公園(F6、中央区大通西4)
春風の農試公園(F10、西区八軒4の6)
樹影の街角(F]10、中央区北1西6)
石狩河口はもう真ママ近(F6、石狩市厚田区聚富)
夏照の大通公園(F10、中央区大通西5)
秋陽の輝き(F30、中央区大通西6)
ボールペン・淡彩が4点。
2019年2月6日(水)~11日(月)午前10時~午後10時(土日月~午後7時、最終日展示~午後5時)
カフェ北都館ギャラリー(札幌市西区琴似3の1)
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