札幌出身で在住の画家、清水恭平さんの道内初個展を見た。
筆者はこの方のことを全く知らず、最終日に
「そういえば、エッセでなんかやってたな」
ぐらいの感覚だったのだが、一見して、絵のうまさに驚いた。
リアリズム的だが、いわゆるフォトリアリズムのような、写真との近似を誇るうまさとは違い、洋画としてしっかり腰が据わった描き方である。
3号から60号まで40点。身近な風景、静物、人物などを、丹念に、派手さのない筆遣いで描いた、2013年から近作までが並ぶ。
芳名帳の上にステイトメントめいた短いテキストが掲げられていて、画家であれば自分の画風を決めなくてはならないとよく言われるが、自分としてはそれを拒否したーという意味のことが書いてあった。
そして、もっぱらリアリズムによってモティーフを描いて行くのだとも。
「平凡なる日常の波立ち」という個展タイトルに、この画家のスタンスが現れているように思う。
一部の作品は、まるでかすみがかかったかのように全体が白っぽい絵の具で覆われている。
筆者が特に注目したのは、冒頭画像の左側の「狭いアトリエ~平凡なる日常~」だ。
作品リストによると2019年とあるから最新作だ。S50と、出品作の中では大きな部類に入る。
縦長の画面。下(手前)の方では、女性が絵を制作している。奥さまも絵画を描くのだろうか。
画面の上半分は夜の窓。画像では分かりづらいのだが、イーゼルの前の、おそらくは画家本人とおぼしき若い男性がこちらを向いている様子がガラスに反射して見える。
なんだかベラスケスの「ラス・メニーナス」を思わせる場面で、しかもあちらは豪華な王宮、こちらは狭いアトリエという対比がおもしろいのだが、筆者がちょっと興奮したのは、この場面は写真に撮ることがかなり難しいのではないかと思ったからだ。つまり、もし画家が絵筆でなく、カメラを手にしているのだとしたら、そのときはファインダーをのぞき込んでいるだろうから、彼の顔はガラスには映らず、この絵にも描かれないことになってしまう。
もちろんファインダーをのぞかずにシャッターを押すこともできるだろうが、カメラの存在をまったく消してしまうことは、画像修整をしない限りは不可能に近いのだ。
会場には経歴などが書かれていなかったので、のちほどネット検索したら、出身は札幌で、1988年生まれ。
金沢美術工芸大学大学院博士後期課程を修了している。
修士課程在学中に、団体公募展のなかでは代表的な存在の一つである「国展」で、初出品の2010年にいきなり「国画賞」を受賞。続く11年にも国画賞を受けて、準会員に推挙されている。
これは、たとえば全道展や道展に置き換えてみると、初出品から2年連続協会賞ということになり、大変な快挙であることがわかると思う。
しかし、2015年、清水さんは国展を退会している。
せっかく会場に画家本人がいらしたのだから、話をしてくればよかったのだが、筆者はシャイな性格で、知らない人と話すのが不得手なので、いま思えば、もったいないことをした(会場は写真撮影可)。
なお、2008年にモエレ沼公園で開かれたグループ展「EXHIBITION 10 BUDS」に出品したのを、筆者は見ているが、申し訳ないことにまったく記憶にない。
2019年2月12日(火)~17日(日)午前10時~午後7時(最終日~5時)
Gallery ESSE(札幌市北区北9西3)
□ギャラリーエッセのブログ https://galleryesse.blogspot.com/2019/02/217.html
筆者はこの方のことを全く知らず、最終日に
「そういえば、エッセでなんかやってたな」
ぐらいの感覚だったのだが、一見して、絵のうまさに驚いた。
リアリズム的だが、いわゆるフォトリアリズムのような、写真との近似を誇るうまさとは違い、洋画としてしっかり腰が据わった描き方である。
3号から60号まで40点。身近な風景、静物、人物などを、丹念に、派手さのない筆遣いで描いた、2013年から近作までが並ぶ。
芳名帳の上にステイトメントめいた短いテキストが掲げられていて、画家であれば自分の画風を決めなくてはならないとよく言われるが、自分としてはそれを拒否したーという意味のことが書いてあった。
そして、もっぱらリアリズムによってモティーフを描いて行くのだとも。
「平凡なる日常の波立ち」という個展タイトルに、この画家のスタンスが現れているように思う。
一部の作品は、まるでかすみがかかったかのように全体が白っぽい絵の具で覆われている。
筆者が特に注目したのは、冒頭画像の左側の「狭いアトリエ~平凡なる日常~」だ。
作品リストによると2019年とあるから最新作だ。S50と、出品作の中では大きな部類に入る。
縦長の画面。下(手前)の方では、女性が絵を制作している。奥さまも絵画を描くのだろうか。
画面の上半分は夜の窓。画像では分かりづらいのだが、イーゼルの前の、おそらくは画家本人とおぼしき若い男性がこちらを向いている様子がガラスに反射して見える。
なんだかベラスケスの「ラス・メニーナス」を思わせる場面で、しかもあちらは豪華な王宮、こちらは狭いアトリエという対比がおもしろいのだが、筆者がちょっと興奮したのは、この場面は写真に撮ることがかなり難しいのではないかと思ったからだ。つまり、もし画家が絵筆でなく、カメラを手にしているのだとしたら、そのときはファインダーをのぞき込んでいるだろうから、彼の顔はガラスには映らず、この絵にも描かれないことになってしまう。
もちろんファインダーをのぞかずにシャッターを押すこともできるだろうが、カメラの存在をまったく消してしまうことは、画像修整をしない限りは不可能に近いのだ。
会場には経歴などが書かれていなかったので、のちほどネット検索したら、出身は札幌で、1988年生まれ。
金沢美術工芸大学大学院博士後期課程を修了している。
修士課程在学中に、団体公募展のなかでは代表的な存在の一つである「国展」で、初出品の2010年にいきなり「国画賞」を受賞。続く11年にも国画賞を受けて、準会員に推挙されている。
これは、たとえば全道展や道展に置き換えてみると、初出品から2年連続協会賞ということになり、大変な快挙であることがわかると思う。
しかし、2015年、清水さんは国展を退会している。
せっかく会場に画家本人がいらしたのだから、話をしてくればよかったのだが、筆者はシャイな性格で、知らない人と話すのが不得手なので、いま思えば、もったいないことをした(会場は写真撮影可)。
なお、2008年にモエレ沼公園で開かれたグループ展「EXHIBITION 10 BUDS」に出品したのを、筆者は見ているが、申し訳ないことにまったく記憶にない。
2019年2月12日(火)~17日(日)午前10時~午後7時(最終日~5時)
Gallery ESSE(札幌市北区北9西3)
□ギャラリーエッセのブログ https://galleryesse.blogspot.com/2019/02/217.html