小川智さんは1943年(昭和18年)小樽生まれ、札幌在住の画家。丸い筆跡によるやわらかい調子と明るい色彩が全体を貫いている点は、写実的な風景画を手がける道内の画家の中でも特徴的だ。
これまで、英国の風景をテーマにした個展などは開いてきたが、道展や日展などに出してきた大作を、小品とともに並べた個展は実に13年ぶりとなる。
冒頭画像は、右から
「DANRISBOURUNE LEER(英)コッツウオルズ」(第93回道展)
「古潭港の春・厚田」(第92回道展)
「積丹町・日司」(第91回道展)
「SNOWSHILL VILLAGE(英)コッツウオルズ」(第90回道展)
いずれもF100号。
コッツウオルズは英国にあり「世界で最も美しい村」として観光客にも人気が高まっている。
後志管内寿都町のおなじ場所を、季節と縦横の位置を違えて描いたふたつの作品。
左は「春待つ磯浜(寿都町弁慶岬)」(第89回道展)、右は「凪なぎる磯浜(寿都町弁慶岬)」(第88回道展、第44回日展)。
手前の、朱色のトタン屋根をもった木造の家がいい味を出している。
小川さんはすみずみまで細かく筆を入れるのが特徴だったが、近年は、細かくかき入れるところと、抜くところとをうまく組み合わせて、画面にメリハリを持たせていると思う。
遠景は空気遠近法を生かして少し明度を上げているようだ。
左から
「待春の牧野(美瑛・白銀模範牧場)」(第84回道展、F130)
「ツコタン秋景(小樽市桃内)」(第83回道展、F130)
「入り江風景(積丹町黄金岬)」(第82回道展、第39回日展、F100)
「入り江風景」は、道展で佳作賞を得た作品。
小川さんは同年と09年に道展で佳作賞を得て、10年に会友となり、13年に会友賞を受賞して、14年に会員に推挙されている。
このあたりの作品を見ていると、小川さんの入り江好きが伝わってくる。
海岸がカーブして、視線が自然に奥へと誘導される。
小川さんによると、中村善策の、手前が高く、中景でいったん下がって、遠景で再び高くなるーという構図に影響されたというのだ。
「小樽出身なんで、やっぱり影響されるんですよ」
と小川さん。
「入り江風景」も、実景よりも手前の畑を高くして、しかも海の面積を多少広げて、構図にメリハリをつけているという。
そうやって眺めると「待春の牧場」も、海辺ではないが、木々の分布が入り江の風景を思わせる。
ただ、あくまで現場でのスケッチが基本で、全体的な構図まではいじっていないとのことだ。
小川さんは以前から油彩を手がけていたが、団体公募展に出すような大作を描くようになったのは50代に入ってから。
道展のほか、写実系の多い団体公募展である白日会にも出品し、準会員になったほか、日展にも2005、07、12年にも入選を果たした。
ただし、10年代に入ってから、道展以外は撤退し、ほかは、日展の小林義晃さんが主宰する「創の会」に出しているのみだという。
小品を見ていても、日が陰っているところもむやみに暗くしないのが小川さんらしい。
風景画を描いている人は多そうだが、実はそれほどでもなく、特に若い世代では絶滅寸前である。
小川さんのように、きっちりした構図と明るい色彩で制作を続けている人は、貴重な存在だと思う。
出品作は、大作ではほかに「入り江風景(積丹町黄金岬)」(85年、F130)と「BIBURY(英、コッツウオルズ)」(87年)がある。小品は次の通り(52点)。
F15 カフェ・ヴィーニャ(藤野ワイナリー) エドワード一世号
F10 ブロードカムデン(英)コッツウオルズ
P10 リトルロックヒルズ(岩見沢)にて 張碓の山荘
M10 エジンバラ(英)
F8 磯浜(神威岬) 国稀酒造(増毛) DOLL B リラの頃 竹鶴酒造(竹鶴政孝氏生家) 有珠の入り江(伊達市有珠) 公園通りの坂道(小樽市) ブロードウェイ(英)コッツウオルズ マーロー(英)
P8 コーヒーミルのある静物 運河風景 古い馬車(藤野ワイナリー) コンポートのぶどう パン籠 車を積むロシア船(小樽港) DANTISBOURUNE LEER(英)コッツウオルズ
F6 クラブハウス(小樽c.c) 祝津漁港 丘の牧草ロール(美瑛) doll A 基坂界隈(函館市) 池畔のリラ 牡丹 矢車草 蔦の家(小樽市) にしん 湖畔の民芸品店(阿寒) ぶどう畑(藤野ワイナリー) 秋深し
P6 海景(積丹・日司) 街路ボウネス(英)湖水地方
F4 余市豊浜町 クロッカス 秋の楡(北大農場) 蓮池とボート(藤野ワイナリー) 余市白岩町 はたはた ヤナギノマイ 空木(ウツギ)咲く
SM パンジー コンテナ埠頭(小樽港) 群れて咲く クロッカス
F0 ムスカリ 水仙とムスカリ クロッカス
もし記載漏れがあったら、すみません。
いずれにしてもすごい制作意欲。ただ、筆致はとても安定して、穏やかそのものだ。
2019年3月14日(木)~19日(火)午前10時~午後6時(最終日~5時)
道新ぎゃらりー(中央区大通西3 北海道新聞社北一条館)
関連記事へのリンク(画像はありません)
■第41回 白日会北海道支部展(2008)
■第39回小樽美術協会展 (2007、これは画像あり)
■作家集団「連」展 (2006)
■小川智油絵個展 (2006)
これまで、英国の風景をテーマにした個展などは開いてきたが、道展や日展などに出してきた大作を、小品とともに並べた個展は実に13年ぶりとなる。
冒頭画像は、右から
「DANRISBOURUNE LEER(英)コッツウオルズ」(第93回道展)
「古潭港の春・厚田」(第92回道展)
「積丹町・日司」(第91回道展)
「SNOWSHILL VILLAGE(英)コッツウオルズ」(第90回道展)
いずれもF100号。
コッツウオルズは英国にあり「世界で最も美しい村」として観光客にも人気が高まっている。
後志管内寿都町のおなじ場所を、季節と縦横の位置を違えて描いたふたつの作品。
左は「春待つ磯浜(寿都町弁慶岬)」(第89回道展)、右は「凪なぎる磯浜(寿都町弁慶岬)」(第88回道展、第44回日展)。
手前の、朱色のトタン屋根をもった木造の家がいい味を出している。
小川さんはすみずみまで細かく筆を入れるのが特徴だったが、近年は、細かくかき入れるところと、抜くところとをうまく組み合わせて、画面にメリハリを持たせていると思う。
遠景は空気遠近法を生かして少し明度を上げているようだ。
左から
「待春の牧野(美瑛・白銀模範牧場)」(第84回道展、F130)
「ツコタン秋景(小樽市桃内)」(第83回道展、F130)
「入り江風景(積丹町黄金岬)」(第82回道展、第39回日展、F100)
「入り江風景」は、道展で佳作賞を得た作品。
小川さんは同年と09年に道展で佳作賞を得て、10年に会友となり、13年に会友賞を受賞して、14年に会員に推挙されている。
このあたりの作品を見ていると、小川さんの入り江好きが伝わってくる。
海岸がカーブして、視線が自然に奥へと誘導される。
小川さんによると、中村善策の、手前が高く、中景でいったん下がって、遠景で再び高くなるーという構図に影響されたというのだ。
「小樽出身なんで、やっぱり影響されるんですよ」
と小川さん。
「入り江風景」も、実景よりも手前の畑を高くして、しかも海の面積を多少広げて、構図にメリハリをつけているという。
そうやって眺めると「待春の牧場」も、海辺ではないが、木々の分布が入り江の風景を思わせる。
ただ、あくまで現場でのスケッチが基本で、全体的な構図まではいじっていないとのことだ。
小川さんは以前から油彩を手がけていたが、団体公募展に出すような大作を描くようになったのは50代に入ってから。
道展のほか、写実系の多い団体公募展である白日会にも出品し、準会員になったほか、日展にも2005、07、12年にも入選を果たした。
ただし、10年代に入ってから、道展以外は撤退し、ほかは、日展の小林義晃さんが主宰する「創の会」に出しているのみだという。
小品を見ていても、日が陰っているところもむやみに暗くしないのが小川さんらしい。
風景画を描いている人は多そうだが、実はそれほどでもなく、特に若い世代では絶滅寸前である。
小川さんのように、きっちりした構図と明るい色彩で制作を続けている人は、貴重な存在だと思う。
出品作は、大作ではほかに「入り江風景(積丹町黄金岬)」(85年、F130)と「BIBURY(英、コッツウオルズ)」(87年)がある。小品は次の通り(52点)。
F15 カフェ・ヴィーニャ(藤野ワイナリー) エドワード一世号
F10 ブロードカムデン(英)コッツウオルズ
P10 リトルロックヒルズ(岩見沢)にて 張碓の山荘
M10 エジンバラ(英)
F8 磯浜(神威岬) 国稀酒造(増毛) DOLL B リラの頃 竹鶴酒造(竹鶴政孝氏生家) 有珠の入り江(伊達市有珠) 公園通りの坂道(小樽市) ブロードウェイ(英)コッツウオルズ マーロー(英)
P8 コーヒーミルのある静物 運河風景 古い馬車(藤野ワイナリー) コンポートのぶどう パン籠 車を積むロシア船(小樽港) DANTISBOURUNE LEER(英)コッツウオルズ
F6 クラブハウス(小樽c.c) 祝津漁港 丘の牧草ロール(美瑛) doll A 基坂界隈(函館市) 池畔のリラ 牡丹 矢車草 蔦の家(小樽市) にしん 湖畔の民芸品店(阿寒) ぶどう畑(藤野ワイナリー) 秋深し
P6 海景(積丹・日司) 街路ボウネス(英)湖水地方
F4 余市豊浜町 クロッカス 秋の楡(北大農場) 蓮池とボート(藤野ワイナリー) 余市白岩町 はたはた ヤナギノマイ 空木(ウツギ)咲く
SM パンジー コンテナ埠頭(小樽港) 群れて咲く クロッカス
F0 ムスカリ 水仙とムスカリ クロッカス
もし記載漏れがあったら、すみません。
いずれにしてもすごい制作意欲。ただ、筆致はとても安定して、穏やかそのものだ。
2019年3月14日(木)~19日(火)午前10時~午後6時(最終日~5時)
道新ぎゃらりー(中央区大通西3 北海道新聞社北一条館)
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■第41回 白日会北海道支部展(2008)
■第39回小樽美術協会展 (2007、これは画像あり)
■作家集団「連」展 (2006)
■小川智油絵個展 (2006)