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山本純一写真集「カムイの大地 北海道・新風景」出版記念写真展 (2019年4月4~9日、札幌)

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 北海道新聞社から写真集が出版されたのを記念した写真展。 
 ひとことで言って、とにかく美しい。
 これまで野生生物をメインに据えた個展や写真集が続いた山本さんだが、今回は、風景がメイン(渡り鳥やシカなどの野生生物は、展示会場では、小さなアイコンのようなサイズのプリントにおさまっている)。
 夜明けだったり、スローシャッターを駆使したり、従来のさまざまな風景写真の水準をはるかに抜き去る、見たことのないような写真が並んでいる。
 青い月光に照らされる樽前ガロー。
 水墨画のような、霧の中の大沼。
 知床の黄金色に光る波。
 濃い灰色に暮れる礼文の海岸。
 星の日周運動が刻まれた空の下を飛び交う蛍の緑色の光。

 展覧会の会場は、キャプションが一切なく、ただ「春」「夏」などの各章に、山本さんが自ら書いたテキストがあるだけ。
 縦のプリントと横のプリント、大小のプリントが巧みに配され、しかも会場の全部で天と地の位置がきれいにそろっている。
「来てくれた方だけの特典」
とのことで、写真集に収められていない作品が9点展示されている。
 それは、いわゆる星景写真に多い。
 流氷の海に、オリオンやシリウスが光る作品などは、ダイナミックで息を呑む。

 筆者がいちばんお気に入りだったのは、3月の夜明け、流氷の海と星空をいっしょに撮った一枚。これも、写真集には収められていない。
 オレンジと黄色の帯の上、濃い藍色の空に光っているのは、夏の大三角と銀河だ。流氷と夏の大三角の共演! 下方で光芒を見せているのは人工衛星だという。
 星景写真へのこだわりについては、そもそも10代で初めてカメラを手にしたときに撮っていたのが星空の写真だったということが、写真集のあとがきに書いてあった。
 会場では縦位置、写真集では横位置にプリントされている夏の天の川の大きな写真は、ISO1600で赤道儀で3分間追尾した1枚という。これで、あのおびただしい星の数がうつるのだ。

 「写真を撮る人だけじゃなくて、一般の人にも見てほしい」
と山本さんは話すが、会場に足を運べない人には、ぜひ写真集「カムイの大地」を手にとってほしい。
 きっと、見たことのない風景が、そこにある。
 でも見たことのない風景でも、多くの場合は、その撮影地がどこなのか、見当がつく作品が多いのが、不思議である。
 おそらく、これまで流布されたその土地のイメージを、さらにもうワンランク磨き上げて提示しているからだろうと思う。

 北海道ではない、しかし、非常に北海道的な風景の数々。
 多くの人に見てほしいと思う。


 なお、写真集は3500円(税別)。
 展示会場になくて、写真集にはおさめられている作品も多数あるので、ぜひ。


2019年4月4日(木)~9日(火)午前10時~午後6時(最終日~5時)
道新ぎゃらりー(札幌市中央区北1西3 北海道新聞社北一条館「道新ぷらざ」内)

●講演と映像上映会(北海道新聞事業局出版センター主催)
 ・『天の部』4月4日(木)午後5時開場、6時開演
 ・『地の部』4月9日(火)午後1時開場、1時30分開演  
  会場/道新プラザDO-BOX(道新ぎゃらりー隣)

●トークショー
 ・4月6日(土)、7日(日)午後1:30 写真展会場内


□写真家 山本純一 http://yamamoto-photo.com/

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