道内で日本画を描く人は、かつての全道展が出品を受け付けていなかったこともあり、道展に所属する人が伝統的に多い。院展、日展、創画といった全国規模の団体公募展に挑戦する人もいるが、それほど多くはない。
「北の日本画展」は、そういった団体の枠を超え、道展を退会して無所属になっている描き手なども含めて、研鑽のために毎年札幌時計台ギャラリーなど(節目の年は道立近代美術館)を会場に開かれてきた。以上の事情で、道展の会員・会友・一般入選者の占める割合が高いのは事実だが。
2年ぶりに見て、そういった「幅の広さ」が変質してきていることを感じた。
昨年秋に、比較的先鋭的な表現に取り組んでいる日本画家7人がゲスト作家を招いて札幌で「鼓動する日本画 CONNECT」という展覧会が開かれたが(紹介の記事を書いていなくて、すみません…)、そこに出品した7人のうち、今年の「北の日本画展」にも出していたのは、蒼野甘夏さんだけである。
蒼野さんはもはや活躍の舞台が北海道から全国に移っているという印象を抱いていたので、ここで見られたのはちょっと意外だったし、うれしかった。
しかし、以前から写実的な花や人物、動物などの絵が多かったこの展覧会は、ますますその傾向が強まった。
「これが日本画?」
と驚くような作品は少ない。
上述の「鼓動する-」組のほか、伊藤洋子さんや伴百合野さん、北口さつきさん、紅露はるかさん、さとう綾子さんら実力ある女性たちの姿もない。
そのなかのひとつ、千葉繁さん「風・波・音」は、木の枝を束ねて横向きに並べて、一辺2センチほどの小さな紙片を26枚ほど表面にちりばめた。紙片にはモノクロの絵が描かれているようだが、小さすぎて判別できない。
野口裕司さんは日本画から出発し、映像など現代アート的な手法に傾斜していった人だが、今回は軸装で、見た目にはまるで前衛書のようだ。
高橋潤さんは、いつも同じ女性をモデルにしているが、どこか風変わりな絵を描く。今回の「種々」は草の上に寝転んでいるのだが、画面右上にめがねをかけた別の人物が少しだけ見えているのだ。
前田健浩さん「魔女の日」。大きな満月をバックに、空に浮かぶほうきに腰掛けた少女。遠くにはビル街が見え、空はピンク色を帯びている。どこか漫画を思わせる構図。
穴吹徳子さんは、植物を写実的に描いているが、画面下部の草やテントウムシは一般的な緑色で、上部のブドウの葉は墨の濃淡で、描き分けているのがおもしろい。ただ「ひと休み」という題はよくわからなかった。
会場の中央付近の、岡惠子さん、千葉晃世さん、川井坦さん、上野幾子さん、中野邦昭さんと並ぶ一角は、ベテランらしい安定感がある。
作品名は次の通り
蒼野甘夏 Letter
穴吹徳子 ひと休み
安栄容子 はるいろ
飯浜るみ子 風のつばさ
池田さやか wind
砂澤 伶 続く世界の一部になる
石川浩子 晩秋の無意根山
今橋香奈子 チューリップ
上杉かほり くるみ
上田入子 さかな愛がとまらない
上田とも子 風の薫る丘
上田弥生 春芳
上野幾子 ふわり
宇野昭輝 月下櫻花
大泉沙知 亜熱帯の庭
岡 惠子 野葡萄の頃
柿崎 愛 折好く
笠嶋咲好 何を思う
勝木郁子 咲く
加藤仁彩 浮動 1
鎌倉ミツエ 白椿樹
川井 坦 初花
河合康子 いつくしむ
木村浩美 睡蓮
工藤葉子 春風
桑田真望 すずめ2
小林文夫 寂
駒澤千波 環
齋藤美佳 夢みるペンギンーかくれんぼー
櫻井明子 潮騒
柴田那奈 ゆめをみている
東海林嘉良子 Corner
城下八重子 招き猫 蘭
高橋 潤 早々
千葉晃世 白
千葉 繁 風・波・音
陳 㬢 卓上
中居 滊晟 滊
中井緋沙子 雨候晴好
中野邦昭 白樺の向こう
西谷正士 昔からここにいる
野口裕司 倖昇 海月 零月
長谷川千子 牡丹
久守圭子 憧れ
百野道子 夏陰やさし
深田智明 夏の日の思い出
前田健浩 魔女の日
村上恵実 Eureka
森田早紀 雨水 かすみ
谷地元麗子 たこやき
山本政彰 えんぶり藤九郎見参
横川 優 ゴーヤ ホウの木
山本孝子 夏の香
2019年6月4日(火)~9日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階)
関連記事へのリンク(第21回以外は画像なし)
■第31回 北の日本画展 (2016)
■第30回
【告知】第30回 北の日本画展
■第29回 北の日本画展 (2014)
【予告】第25回記念 北の日本画展
■第24回北の日本画展(2009年)
■第23回
■第22回
■第21回
■20周年記念
■第19回
■第18回(5月17日の項)
■第17回
■01年(5月16日の項)
7月5日(金)~14日(日)午前10時~午後6時(木曜午後1時半~)、水曜休み
岩見沢市絵画ホール松島正幸記念館(7西1)
・一般210円、高大生150円、中学生以下無料
・JR岩見沢駅からの道順(約1キロ、徒歩13分)
・都市間高速バス「高速いわみざわ号」で「市民会館前」降車、約830メートル、徒歩11分
7月18日(木)~31日(水)午前10時~午後6時(最終日~4時)、月曜休み
アートホール東洲館(深川市1の9 深川経済センター2階)
・JR深川駅のすぐ前
・都市間高速バス「高速るもい号(深川経由)」で「深川十字街」降車、約340メートル、徒歩5分
「北の日本画展」は、そういった団体の枠を超え、道展を退会して無所属になっている描き手なども含めて、研鑽のために毎年札幌時計台ギャラリーなど(節目の年は道立近代美術館)を会場に開かれてきた。以上の事情で、道展の会員・会友・一般入選者の占める割合が高いのは事実だが。
2年ぶりに見て、そういった「幅の広さ」が変質してきていることを感じた。
昨年秋に、比較的先鋭的な表現に取り組んでいる日本画家7人がゲスト作家を招いて札幌で「鼓動する日本画 CONNECT」という展覧会が開かれたが(紹介の記事を書いていなくて、すみません…)、そこに出品した7人のうち、今年の「北の日本画展」にも出していたのは、蒼野甘夏さんだけである。
蒼野さんはもはや活躍の舞台が北海道から全国に移っているという印象を抱いていたので、ここで見られたのはちょっと意外だったし、うれしかった。
しかし、以前から写実的な花や人物、動物などの絵が多かったこの展覧会は、ますますその傾向が強まった。
「これが日本画?」
と驚くような作品は少ない。
上述の「鼓動する-」組のほか、伊藤洋子さんや伴百合野さん、北口さつきさん、紅露はるかさん、さとう綾子さんら実力ある女性たちの姿もない。
そのなかのひとつ、千葉繁さん「風・波・音」は、木の枝を束ねて横向きに並べて、一辺2センチほどの小さな紙片を26枚ほど表面にちりばめた。紙片にはモノクロの絵が描かれているようだが、小さすぎて判別できない。
野口裕司さんは日本画から出発し、映像など現代アート的な手法に傾斜していった人だが、今回は軸装で、見た目にはまるで前衛書のようだ。
高橋潤さんは、いつも同じ女性をモデルにしているが、どこか風変わりな絵を描く。今回の「種々」は草の上に寝転んでいるのだが、画面右上にめがねをかけた別の人物が少しだけ見えているのだ。
前田健浩さん「魔女の日」。大きな満月をバックに、空に浮かぶほうきに腰掛けた少女。遠くにはビル街が見え、空はピンク色を帯びている。どこか漫画を思わせる構図。
穴吹徳子さんは、植物を写実的に描いているが、画面下部の草やテントウムシは一般的な緑色で、上部のブドウの葉は墨の濃淡で、描き分けているのがおもしろい。ただ「ひと休み」という題はよくわからなかった。
会場の中央付近の、岡惠子さん、千葉晃世さん、川井坦さん、上野幾子さん、中野邦昭さんと並ぶ一角は、ベテランらしい安定感がある。
作品名は次の通り
蒼野甘夏 Letter
穴吹徳子 ひと休み
安栄容子 はるいろ
飯浜るみ子 風のつばさ
池田さやか wind
砂澤 伶 続く世界の一部になる
石川浩子 晩秋の無意根山
今橋香奈子 チューリップ
上杉かほり くるみ
上田入子 さかな愛がとまらない
上田とも子 風の薫る丘
上田弥生 春芳
上野幾子 ふわり
宇野昭輝 月下櫻花
大泉沙知 亜熱帯の庭
岡 惠子 野葡萄の頃
柿崎 愛 折好く
笠嶋咲好 何を思う
勝木郁子 咲く
加藤仁彩 浮動 1
鎌倉ミツエ 白椿樹
川井 坦 初花
河合康子 いつくしむ
木村浩美 睡蓮
工藤葉子 春風
桑田真望 すずめ2
小林文夫 寂
駒澤千波 環
齋藤美佳 夢みるペンギンーかくれんぼー
櫻井明子 潮騒
柴田那奈 ゆめをみている
東海林嘉良子 Corner
城下八重子 招き猫 蘭
高橋 潤 早々
千葉晃世 白
千葉 繁 風・波・音
陳 㬢 卓上
中居 滊晟 滊
中井緋沙子 雨候晴好
中野邦昭 白樺の向こう
西谷正士 昔からここにいる
野口裕司 倖昇 海月 零月
長谷川千子 牡丹
久守圭子 憧れ
百野道子 夏陰やさし
深田智明 夏の日の思い出
前田健浩 魔女の日
村上恵実 Eureka
森田早紀 雨水 かすみ
谷地元麗子 たこやき
山本政彰 えんぶり藤九郎見参
横川 優 ゴーヤ ホウの木
山本孝子 夏の香
2019年6月4日(火)~9日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階)
関連記事へのリンク(第21回以外は画像なし)
■第31回 北の日本画展 (2016)
■第30回
【告知】第30回 北の日本画展
■第29回 北の日本画展 (2014)
【予告】第25回記念 北の日本画展
■第24回北の日本画展(2009年)
■第23回
■第22回
■第21回
■20周年記念
■第19回
■第18回(5月17日の項)
■第17回
■01年(5月16日の項)
7月5日(金)~14日(日)午前10時~午後6時(木曜午後1時半~)、水曜休み
岩見沢市絵画ホール松島正幸記念館(7西1)
・一般210円、高大生150円、中学生以下無料
・JR岩見沢駅からの道順(約1キロ、徒歩13分)
・都市間高速バス「高速いわみざわ号」で「市民会館前」降車、約830メートル、徒歩11分
7月18日(木)~31日(水)午前10時~午後6時(最終日~4時)、月曜休み
アートホール東洲館(深川市1の9 深川経済センター2階)
・JR深川駅のすぐ前
・都市間高速バス「高速るもい号(深川経由)」で「深川十字街」降車、約340メートル、徒歩5分