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東京2015-2(3) 春画展 (2015年9月19日~12月23日)

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承前

 さて、日本で初めての春画展であるが、筆者が行ったときにはけっこうな混雑で、入場するまでに10分以上待たされた。
 雨にぬれながら、春画を見るための列に並ぶというのは、なかなかみじめな気持ちになってくるものである。

 混雑の度合いでいうと、かつての雪舟展や伊藤若冲展、ゴッホ展(道立近代美術館)ほどではないにせよ、先日の夷衆列像展(北海道博物館)と同程度だった。最前列に行かないと絵が見えないのに、その最前列がなかなかあかないのだ。
 ただし、なぜかほとんど人の姿がない絵もある。したがって、自分のペースで順番に見ていくことはできず、すいているところを見つけては足を運ぶというスタイルの鑑賞にならざるを得なかった。そもそも、今回の展覧会は、順路を設定していない(4階から順に見ていくべし、という程度)。
 客層は老若男女さまざまだが、若い女性がわりに多かったのは意外であった。

 春画の内容は、ごく簡単に書くと、ポルノグラフィーである。
 西洋の画像や法体系の影響がほとんどない時代なので、とうぜん無修整である。大半の絵では、男女が性交中で、結合部分もリアルに描写している。
 現代の男性を取り巻く性的な画像との最大の違いは、現代は女性の水着姿や裸体が多いのに対し、春画では男女ペアで(たまに3P)で描かれていることだろう。
 キスの最中を描いた絵がいくつかあったこと、柱に布で縛られている女性やフェラチオをしている女性がいることなどは、現代とあまり変わりがないといえるかもしれない。

 ただ、春画の多くは、上流階級で嫁入り道具だったり、いわばこっそりと性教育や自慰行為に用いられたものであるから、白昼、展覧会場に堂々と並べるのは、やはり本来のあり方とは異なることは、認識しておいたほうがいいだろうと思う。だからといって、白昼展示するのを禁じるべきでもないだろうが。


 ひとこと付け加えておくなら、かつては「浮世絵」といえば「春画」を連想する人がかなりの程度いた。春画は浮世絵にとってごくありふれた題材だったのだ。
 しかし、そのままでは、浮世絵がまじめな学問対象とされないことに危機感を抱いた研究者たちがいて、あえて春画を、世間が浮世絵に対して抱いているイメージから遠ざからせるべく、啓蒙活動に励んだ。だから、近代以降に出版された浮世絵入門書の多くは、春画にはほとんどふれていない。
 おそらく、わいせつがどうのこうのということのほかに、この浮世絵のイメージアップ運動が功を奏したことが、世間から春画を遠くしてしまった原因のひとつではないかと推測する。

 この展覧会を機に、春画をことさらに排するのではなく、かといって持ち上げすぎるのでもなく、絵画のひとつとして、ふつうに鑑賞できるような機運が高まればいいと思う。


2015年9月19日~12月23日(水)午前9時30分~午後8時(入場は午後7時30分)=日曜は2時間繰り上がり、月曜休み(祝日と12月21日は開館)
永青文庫(東京都文京区目白台1)

□特設ページ http://www.eiseibunko.com/shunga/


(この項続く) 

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