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東京2015-2(6) MOMATコレクション

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(承前)

 さて<Re: play 1972/2015―「映像表現 '72」展、再演>展はおもしろいのだが、インタビューなどを全部見ているととても時間が足りないので、「MOMATコレクション」つまり所蔵品展にうつる。
 東京国立近代美術館では、「藤田嗣治展」を独立して開催していたのではなく、MOMATコレクション展の中の一部分として、同館が所蔵したり、無期限貸与を受けている藤田の全点を展示していたのである。

 たとえば道立近代美術館にくらべて、作品そのものがすばらしいのは致し方ないとしても、作品の説明パネルなどを読んでいると、非常に勉強になる。
 いいかえれば、あんまり好きなことばじゃないけど「気づき」があるのだ。

 「気づき」といえば…。

 ときどき、美術館内の会話や騒音にやたらと厳しい人がいる。
 筆者はあんまり気にならない。もちろん、むやみにやかましいのはごめんこうむる。しかし、展示作品の感想を小声で話し合っているぐらいは、ぜんぜんかまわないのではないかと思う。
 むしろ、その会話が、見る際の参考になることだってある。

 展示室の奥に、原田直次郎の「騎龍観音」(1890年作)がかかっていた。
 日本の洋画の初期を飾る、縦2.7メートルの大作だ。
 ちなみに、原田は森鴎外と親しく、彼の「うたかたの記」の主人公は原田がモデルだといわれている(「うたかたの記」は、近代日本の苦渋や矛盾をどこかで反映している「舞姫」「高瀬舟」といった作と異なり、ロマン主義満開の、ある意味お花畑な作品である)。

 これをですね、若い女性ふたりが「45度右だよね」とか、こそこそ言いながら見ているのである。

 観音の頭部の周囲に光の輪(縦に長い楕円形)が浮かんでいるのだが、この輪は、右45度ぐらいの角度からでないと、はっきりと見えないということを、教えられたらしく、いろいろな角度から見てみて、それを確かめているのだ。
 筆者もやってみたが、たしかにそのとおりである。
 正面からでは、光の輪はまったく見えない。

 役に立つおしゃべりというものもあるんだなあ、と感心してしまったのだった。


 さて、次項は、藤田嗣治について書く。

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