今年の道内の美術展でも意欲的な企画として筆者が注目している展覧会、
開館20周年特別企画展「室内における人間像〜その空間と存在」―神田日勝の『室内風景』の内奥へ
が、6月26日から、十勝管内鹿追町の神田日勝記念美術館で開かれます。
神田日勝の代表作にして最後の完成作であり、北海道の美術史でも特筆すべき絵画「室内風景」。
三方にびっしりと新聞紙が貼られた室内で、ひざを抱えてすわり正面を見据える人物を描いたこの作品は、一度見たら忘れがたい強烈な印象を残します。
道立近代美術館の所蔵品ですが、神田日勝記念美術館は、この作品を借りるとともに、東京都現代美術館の所蔵作も加えて、「室内風景」を軸とした展覧会を企画しました。
以下、チラシには次のように書かれています。
戦後日本美術の潮流の中で、《密室の絵画》と呼ばれた作家群は、1946年から49年にかけて展開されたリアリズム論争を継承した《ルポルタージュ絵画》とともに敗戦後の日本の抱える社会問題や閉塞へいそく感を捉えた作品によって特徴づけられています。
その代表的な作家である河原温の「孕んだ女」(1954)を中核に、《密室の絵画》の作品群との対比を通して、神田日勝の「室内風景」の空間表現と人間像について考察します。
また併せて、1950年代から1970年代にかけて神田日勝が画家として生きた時代のリアリズム表現の多様性を「室内における人間像」という主題に焦点をあてて、戦後日本美術の具象表現の一端を紹介します。
チラシの裏面に印刷されているのは、次の作品です。
大沼映夫「二年目の仮縫い」1975年
鶴岡政男「重い手」1949年
井上長三郎「休憩」1967年
小山田二郎「鳥女」1961年
田村文雄「夢想記―夜」1970年
池田龍雄「倉庫」1957年
市野英樹「室内にて」1978年
神田日勝「室内風景」1968年
このうち「室内風景」は道立近代美術館蔵。上記の「室内風景」とは別の、テレビや絵の具と人物を描いた作品です。
鶴岡政男「重い手」は、戦争が日本に与えた刻印の深さを象徴的、幻想的に表現した、戦後絵画を代表する名作です。これを見るためだけに鹿追へ行く人がいたとしても、おかしくないと思います。
河原温は、コンセプチュアルアートの作家として世界的な存在ですが、長い間人前に姿を見せず、謎の作家としても知られています。
なお、このほか、石井茂雄、朝妻治郎、奥谷博、木村光佑、田口安男、田村文雄、野田哲也、三尾公三の各氏の作品も展示されます。
それにしても、当たり障りのないテーマに沿って故人の作品を陳列するだけではなく、日本の美術史の中に神田日勝の画業を
どう位置づけ、どのように顕彰していくかという問題意識に裏付けられた展覧会を組織している神田日勝記念美術館の姿勢には、頭が下がります。
戦後日本の美術史を視野に収めた展覧会は、全国的にもそれほど多くないだけに、いっそう意欲的な姿勢が光る企画だと思います。
2013年6月26日(水)〜8月25日(日)午前10時〜午後5時(展示室への入場は午後4時半まで)
月曜休み(ただし祝日は開館し翌火曜休み)。祝日の翌日休み
神田日勝記念美術館(鹿追町東町2) http://kandanissho.com/
一般510円(10人以上の団体450円)、高校生300円(同250円)、小中学生300円(同250円)
【関連事業】
●ギャラリー・トーク 6月29日(土)午後2時
(要入館料・神田日勝記念美術館展示室)当館学芸員
●美術講話 7月19日(金)午後6時30分
(無料・神田日勝記念美術館2階団体活動室)当館学芸員
●室内楽の夕べ 7月27日(土)午後6時
出演:一鐵久美子(ソプラノ)・北濱侑樹(フルート)・新堀聡子(ピアノ)
プログラム:20世紀近代の音楽、ドイツ・フランス・日本の楽曲と歌曲から
(要入館料・神田日勝記念美術館展示室)
●記念講演会 8月25日(日)午後2時
「壁―その拮抗のはざまで〜戦後日本美術の一断面〜」
講師:佐藤友哉氏(札幌芸術の森美術館長)
(無料・鹿追町民ホール)
※馬耕忌と同時開催
・帯広駅ターミナルから北海道拓殖バス「然別湖畔」行きに乗車、「神田日勝記念美術館」降車
・新得駅前から北海道拓殖バスで「神田日勝記念美術館」降車
※時刻表 http://www.takubus.com/pdf/times201303/No3.pdf
開館20周年特別企画展「室内における人間像〜その空間と存在」―神田日勝の『室内風景』の内奥へ
が、6月26日から、十勝管内鹿追町の神田日勝記念美術館で開かれます。
神田日勝の代表作にして最後の完成作であり、北海道の美術史でも特筆すべき絵画「室内風景」。
三方にびっしりと新聞紙が貼られた室内で、ひざを抱えてすわり正面を見据える人物を描いたこの作品は、一度見たら忘れがたい強烈な印象を残します。
道立近代美術館の所蔵品ですが、神田日勝記念美術館は、この作品を借りるとともに、東京都現代美術館の所蔵作も加えて、「室内風景」を軸とした展覧会を企画しました。
以下、チラシには次のように書かれています。
戦後日本美術の潮流の中で、《密室の絵画》と呼ばれた作家群は、1946年から49年にかけて展開されたリアリズム論争を継承した《ルポルタージュ絵画》とともに敗戦後の日本の抱える社会問題や閉塞へいそく感を捉えた作品によって特徴づけられています。
その代表的な作家である河原温の「孕んだ女」(1954)を中核に、《密室の絵画》の作品群との対比を通して、神田日勝の「室内風景」の空間表現と人間像について考察します。
また併せて、1950年代から1970年代にかけて神田日勝が画家として生きた時代のリアリズム表現の多様性を「室内における人間像」という主題に焦点をあてて、戦後日本美術の具象表現の一端を紹介します。
チラシの裏面に印刷されているのは、次の作品です。
大沼映夫「二年目の仮縫い」1975年
鶴岡政男「重い手」1949年
井上長三郎「休憩」1967年
小山田二郎「鳥女」1961年
田村文雄「夢想記―夜」1970年
池田龍雄「倉庫」1957年
市野英樹「室内にて」1978年
神田日勝「室内風景」1968年
このうち「室内風景」は道立近代美術館蔵。上記の「室内風景」とは別の、テレビや絵の具と人物を描いた作品です。
鶴岡政男「重い手」は、戦争が日本に与えた刻印の深さを象徴的、幻想的に表現した、戦後絵画を代表する名作です。これを見るためだけに鹿追へ行く人がいたとしても、おかしくないと思います。
河原温は、コンセプチュアルアートの作家として世界的な存在ですが、長い間人前に姿を見せず、謎の作家としても知られています。
なお、このほか、石井茂雄、朝妻治郎、奥谷博、木村光佑、田口安男、田村文雄、野田哲也、三尾公三の各氏の作品も展示されます。
それにしても、当たり障りのないテーマに沿って故人の作品を陳列するだけではなく、日本の美術史の中に神田日勝の画業を
どう位置づけ、どのように顕彰していくかという問題意識に裏付けられた展覧会を組織している神田日勝記念美術館の姿勢には、頭が下がります。
戦後日本の美術史を視野に収めた展覧会は、全国的にもそれほど多くないだけに、いっそう意欲的な姿勢が光る企画だと思います。
2013年6月26日(水)〜8月25日(日)午前10時〜午後5時(展示室への入場は午後4時半まで)
月曜休み(ただし祝日は開館し翌火曜休み)。祝日の翌日休み
神田日勝記念美術館(鹿追町東町2) http://kandanissho.com/
一般510円(10人以上の団体450円)、高校生300円(同250円)、小中学生300円(同250円)
【関連事業】
●ギャラリー・トーク 6月29日(土)午後2時
(要入館料・神田日勝記念美術館展示室)当館学芸員
●美術講話 7月19日(金)午後6時30分
(無料・神田日勝記念美術館2階団体活動室)当館学芸員
●室内楽の夕べ 7月27日(土)午後6時
出演:一鐵久美子(ソプラノ)・北濱侑樹(フルート)・新堀聡子(ピアノ)
プログラム:20世紀近代の音楽、ドイツ・フランス・日本の楽曲と歌曲から
(要入館料・神田日勝記念美術館展示室)
●記念講演会 8月25日(日)午後2時
「壁―その拮抗のはざまで〜戦後日本美術の一断面〜」
講師:佐藤友哉氏(札幌芸術の森美術館長)
(無料・鹿追町民ホール)
※馬耕忌と同時開催
・帯広駅ターミナルから北海道拓殖バス「然別湖畔」行きに乗車、「神田日勝記念美術館」降車
・新得駅前から北海道拓殖バスで「神田日勝記念美術館」降車
※時刻表 http://www.takubus.com/pdf/times201303/No3.pdf