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■全道展 第8回新鋭展(2018年11月20~25日、札幌)

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 かつて大同ギャラリーがあったころ、道内の三大団体公募展である「道展」「全道展」「新道展」がそれぞれ6日ずつ、似た趣旨の展覧会を開いていたことがあった。
 基本は貸しギャラリーだった同ギャラリーの企画だったらしい。ただ、新道展は、会員によるドローイング展など、ちょっと毛色の変わったことをやっていた。
 また全道展は一時期、その年の協会賞(最高賞のこと)の受賞者の個展を行っていた。これは、良い発想に思えるが、ふたをあけてみると、受賞者の知りあいが十数人のグループ展よりも少ないから来場者が減る。札幌圏以外の受賞者の場合は特に、見に来る知人も少ないため、数年でもとのスタイルに戻った。
 大同ギャラリーがなくなり、新鋭展を、会場を移して続けているのは全道展だけである。
 全道展は、北海道新聞社が主催に名を連ねているのだが、この新鋭展は道新ぎゃらりーを使用せず、紙面での扱いもやや冷淡である。

 前置きが長すぎた。
 今年の新鋭展には、協会賞1人、道新賞2人、八木賞1人、佳作賞5人、会友賞3人、会友選抜7人の計19人が、32点を出品している。絵画、版画、彫刻、工芸の4部門がそろっている。
 もちろん、全道展での新鋭ということだから、若い人とは限らない。

 個人的に気になった作品。
 志摩利希(札幌)「Crow Fountain」「Fall」
 志摩さんは数年前に北海道に戻ってから、銅版画を精力的に制作、発表している。女性がいる、不思議な風景を描く。
 画面に登場する風景や動植物は、ことさらに情緒を強調したわけでもないのに、なぜか懐かしい。

 佐藤真康(帯広)「眠り」
 佐藤さんは八木賞。油彩。S100。
 目をつぶって、左腕を下にして水色の敷布に横たわる裸婦の胸から上の部分を、わりあい写実的に描いている。
 乳首があらわになっており、これじゃ風邪をひくぞ、と思う。
 冗談はさておき、さらに異例なのは、頭を画面の右、胸を左に描いているのに、縦構図ということ。当然、画面の天地に空きができるが、乾く前の絵の具が流れた跡が無数にあるため、スカスカした感じは受けない。

 似たような人物像の追究として、第2席にあたる道新賞を受けた金子圭太(札幌)の絵画「君と僕のこれから」。(50号)
 こちらは、赤いパンツ一丁の半裸の男性がベッドらしき白い台の端に腰かけている様子を描いており、彼は自分の前で組んだ手で花1輪をいとおしそうに持っている。
 男性の周囲の空間には、さまざまな色が筆触も生々しく散らばっていて、ここだけ見ていると抽象画のようですらある。

 近年の全道展の絵画部門には、佐藤仁敬さんなど、人間を写実的に描いた絵の潮流があるように感じる。

 木村麻衣(札幌)「管理人のいない庭」(M50)
 昨年の協会賞に次ぐ受賞。
 雑誌のグラビアのコピーや英字紙が支持体になり、その上に黒でドローイングした人物などの印象が以前よりも後退している。

 神原利樹(胆振管内洞爺湖町)「早春の洞爺湖」(F15)
 奥に洞爺湖と中島が、手前に段々畑や、つながれた1匹のヤギなどが描かれ、わりあいオーソドックスな風景画。のんびりとした雰囲気だが、ひとことで言うと「輝かしさ」がある。
 下地に明るい黄色を塗るなどしているのだろうか。
 ほかに「群落のひまわり・有珠山」(S100)。

 市橋節こ(札幌)「宙・気」(S100)
 惑星の上空で、うずくまる人。宇宙的な、おおきな構えのある絵。
 ほかに「気・在りて」(F20)。


 ほかの出品作は次の通り。註記のないものは絵画。
三谷佳典(上川管内音威子府村) 内緒の手紙(F50)、内緒の願い星(P6)
滝花保和(函館)        Flash(S50)
射水美栄子(北見)=版画    停泊(縦67×横48)、たんぽぽ(縦40×横30)
木俣猛(日高管内浦河町)=工芸 湖の秋(68×92×3)、イメージ(92×115×7)
太田れいこ(札幌)       蛹の閾値 II(F100)、蛹の閾値I(F30)
加賀見恵美(富良野)      夢色イロ(S100)

高崎勝司(恵庭)=版画     棲せい(縦50×横70)(縦30×横30)=同題2点
山口順子(旭川)        CHALLENGE(F100)、秋風と戯れ(4号)
西澤弘子(札幌)        海鳴り(夕映え)(F130)
高野裕子(札幌)=版画     白い旋律(54×38)、白い旋律ー蝶(15.5×11)
藤林峰夫(札幌)=版画     アンブルサイドのOld Bridge house(縦78×横55)、樹氷(縦20×横30)
春藤聡子(札幌)=彫刻     Life I(150×21×21)、Life II(120×30×21)
阿部綾子(愛知県)=工芸    待ちわびて(41×41×41)、記憶(40×40×20)


2018年11月20日(火)~25日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後4時半)
ギャラリー大通美術館(札幌市中央区大通西5 大五ビル)



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