Quantcast
Channel: 北海道美術ネット別館
Viewing all articles
Browse latest Browse all 12079

■現代作家シリーズ vol.Ⅲ「日高理恵子 木を、空を、見る」(2018年11月1日~19年2月12日、札幌)

$
0
0
 日高理恵子さんは1958年東京生まれ。
 武蔵野美大の日本画学科を卒業、同大大学院を修了した後、95年から96年にかけて文化庁芸術家在外研修員としてドイツに滞在しました。帰国後は、一貫してモノクロームで、下から見上げた木を描いています。
 フライヤーによると、日本画の画材である、水晶末と胡粉を何層も塗り重ねた下地に、緑青や群青を焼いた顔料で描いているとのこと。無数のドローイングをもとに、ペインティングは数年かけて完成させるそうです。

 今回は「空との距離」と題した大小10点が展示されています。
 すべて正方形です。キャプションなどが壁面にないこともあり、じつにすっきりとした会場になっています。

 道内では2007年、札幌芸術の森美術館で、広島市現代美術館の所蔵品展が開かれた際に見たことがあります。
 また、道立釧路芸術館に「落葉松」が所蔵されています。



 筆者はこれまで、日本画とか洋画とかを意識して彼女の絵を見たことがありませんでした。

 いわれてみれば、たしかに日本画です。
 輪郭線が強調されているわけでなく、装飾性からもほど遠いですが、背景を白く抜いているのは洋画ではふつうならありえないことです。

 彼女の作品は、日本画の文脈で語られることがあまり無かったと思います。
 院展、日展、創画といった団体公募展に属さずに活動した日本画家の、それもかなり早い世代だったからかもしれません(団体公募展離れは、日本画より洋画のほうが早かった)。
 しかし、団体公募展に属さず、現代アートを主に扱う美術商がついていることが、現代美術の文脈で評価されることの理由だとしたら、つまらないことだと思うのですが…(ほんとうの理由が何かは、筆者の手にあまります)。

 ひとつ言えるとすれば、差異を求めてマニエリスム色を強めているとしか筆者には感じられない現代日本の絵画のなかで、このシンプルさは、かえって新鮮に受け止められたという事情があるのではないかと、推察されます。


 木を題材にする画家は昔からいます。
 ほとんどは、横から木をとらえて、風景といっしょに描きます。
 日高さんのように、木(の部分)だけを、しかも仰ぎ見る角度で絵にする人は、少なかったのでしょう。

 ただ、この絵って、東京だと新鮮に見えるんだろうなーという気はします。
 木が少ないし、常緑樹の占める割合が高いし、冬が短い。
 この絵のような光景を見る機会は、北海道よりもはるかに少ないのです。
 落葉樹が多く冬の長い道内では、ふつうに見られる光景なので、ありがたみという点ではちょっと不利かもしれません。
 逆に言えば、わたしたち道民には、なじみの深い光景だということもいえそうです。


2018年11月1日(木)~19年2月12日(火)午前11時~午後5時、会期中無休
ギャラリー柏(札幌市中央区北4西6 六花亭札幌本店5階)



・地下鉄南北線さっぽろ駅「アスティ45」出口から約180メートル、徒歩3分
※北5条通りを、西に向かって直進

・JR札幌駅南口から約450メートル、徒歩6分

Viewing all articles
Browse latest Browse all 12079

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>