(承前)
前項で筆者はおもに絹谷幸二の美術界での位置のような話を書き、「大切なのは、作品が良いかどうか、ということ」としめくくった。
筆者は、前半部分の作品も悪いとは思わないが、最後の部屋に飾られていた龍のシリーズなどに目を奪われた。
冒頭画像は、左端が「朝陽龍神下山上賀茂神社」、次が順に「迎臨飛龍金閣寺」「樹上双龍伏見稲荷」などとなっている。
このシリーズは計8枚。京都の名所などと、力強い龍を組み合わせた図だ。
日本では「掛け軸」「屛風」という展示の方式から、風景画でも縦長の構図が好まれてきた。また、風景と、人物など全く異なる要素を画面上で一緒にするという手法も、浮世絵ではおなじみだ。
そうやって考えてくると、絹谷幸二芸術についての、筆者なりの結論はひとつしかない。
絹谷幸二氏の絵は日本画だ
ということである。
もちろん、絹谷氏が洋画家であり、油絵にアフレスカという技法をミックスしていることは百も承知である。
日本画が、墨、岩絵の具、膠にかわを用いる絵画であることも知っていて、その上であえてそう言ってみたのだ。
実際、会場の一角に並ぶガラスびんに入っていたのがどれも岩絵の具だったのだが。
それにしても、絹谷さんの絵は日本画的といえないだろうか。
物質感のあるマチエール(画肌)。
人物や建物などに必ずひかれる輪郭線。
一方で、陰影は強調されず、わりあい平坦に表現される色面。
画面にかき入れられる文字…。
解説パネルでは「劇画調」と説明されており、それも正しいと思うのだが、同時に日本画(日本絵画)の特徴であるともいえるだろう。
派手な色彩は「わびさび」とほど遠く、日本画的ではないという人もいるかもしれない。
でも、日光東照宮も日本文化なのだ。
むしろ絹谷芸術は、安土桃山的だということもできよう。
以上のような特徴をもつ絹谷氏の絵が、日本的な意匠に合わないはずはない。
画像は2017年作の「富嶽旭日風神雷神」だが、「ここまでやるか!」というほどに日本的な意匠を導入しながらも、北斎や宗達の単なるパロディーにせずに一枚にまとめているあたり、画家の力量を物語っている。
ただし、筆者は北海道人なので、この種の意匠を見ても、むしろ異国情緒を感じてしまう。
関西などに住んでいる人には、京都の風景と龍をまとめた絵とか、富士山と風神雷神とか、どういうふうに受け止められるのだろう。ちょっと興味が湧いた。
2018年12月8日(土)~19年1月27日(日)午前9時半~午後5時(入場は30分前)、月曜休み(ただし12月24日と1月14日は開館し翌火曜休み)、12月25日と29日~1月3日も休み
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
当日券 一般1300円、高大生800円、中学生600円。65歳以上は1100円(証明できるものが必要)
所蔵品展との共通券などもあります
□画家 絹谷幸二 公式サイト http://kinutani.jp/
□STV(札幌テレビ放送)の公式ページ https://www.stv.jp/event/kinutani/index.html
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」で降車、すぐ(小樽、手稲方面行きは、都市間高速バスを含め全便が停車します)
・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分
・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分
前項で筆者はおもに絹谷幸二の美術界での位置のような話を書き、「大切なのは、作品が良いかどうか、ということ」としめくくった。
筆者は、前半部分の作品も悪いとは思わないが、最後の部屋に飾られていた龍のシリーズなどに目を奪われた。
冒頭画像は、左端が「朝陽龍神下山上賀茂神社」、次が順に「迎臨飛龍金閣寺」「樹上双龍伏見稲荷」などとなっている。
このシリーズは計8枚。京都の名所などと、力強い龍を組み合わせた図だ。
日本では「掛け軸」「屛風」という展示の方式から、風景画でも縦長の構図が好まれてきた。また、風景と、人物など全く異なる要素を画面上で一緒にするという手法も、浮世絵ではおなじみだ。
そうやって考えてくると、絹谷幸二芸術についての、筆者なりの結論はひとつしかない。
絹谷幸二氏の絵は日本画だ
ということである。
もちろん、絹谷氏が洋画家であり、油絵にアフレスカという技法をミックスしていることは百も承知である。
日本画が、墨、岩絵の具、膠にかわを用いる絵画であることも知っていて、その上であえてそう言ってみたのだ。
実際、会場の一角に並ぶガラスびんに入っていたのがどれも岩絵の具だったのだが。
それにしても、絹谷さんの絵は日本画的といえないだろうか。
物質感のあるマチエール(画肌)。
人物や建物などに必ずひかれる輪郭線。
一方で、陰影は強調されず、わりあい平坦に表現される色面。
画面にかき入れられる文字…。
解説パネルでは「劇画調」と説明されており、それも正しいと思うのだが、同時に日本画(日本絵画)の特徴であるともいえるだろう。
派手な色彩は「わびさび」とほど遠く、日本画的ではないという人もいるかもしれない。
でも、日光東照宮も日本文化なのだ。
むしろ絹谷芸術は、安土桃山的だということもできよう。
以上のような特徴をもつ絹谷氏の絵が、日本的な意匠に合わないはずはない。
画像は2017年作の「富嶽旭日風神雷神」だが、「ここまでやるか!」というほどに日本的な意匠を導入しながらも、北斎や宗達の単なるパロディーにせずに一枚にまとめているあたり、画家の力量を物語っている。
ただし、筆者は北海道人なので、この種の意匠を見ても、むしろ異国情緒を感じてしまう。
関西などに住んでいる人には、京都の風景と龍をまとめた絵とか、富士山と風神雷神とか、どういうふうに受け止められるのだろう。ちょっと興味が湧いた。
2018年12月8日(土)~19年1月27日(日)午前9時半~午後5時(入場は30分前)、月曜休み(ただし12月24日と1月14日は開館し翌火曜休み)、12月25日と29日~1月3日も休み
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
当日券 一般1300円、高大生800円、中学生600円。65歳以上は1100円(証明できるものが必要)
所蔵品展との共通券などもあります
□画家 絹谷幸二 公式サイト http://kinutani.jp/
□STV(札幌テレビ放送)の公式ページ https://www.stv.jp/event/kinutani/index.html
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」で降車、すぐ(小樽、手稲方面行きは、都市間高速バスを含め全便が停車します)
・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分
・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分