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■第46回北海道抽象派作家協会展 (2019年4月16~21日、札幌)

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 昨年の第45回展で林教司さんの遺作を見たばかりなのに、今年は同人の佐々木美枝子さん(札幌)の遺作が陳列されている。
 出入りの多い抽象派作家協会の中で、今荘義男さん(岩見沢市栗沢町)とともに創立メンバーとして会を支えてきただけに、喪失感は深い。

 今回は、推薦作家として、會田千夏(札幌)、堅田智子(苫小牧)、木内弘子、田中郁子(日高管内浦河町)の4氏が参加。
 同人は、今荘さんのほか、小川豊(小樽)、後藤和志(札幌)、田中季里、田村純也(苫小牧)、名畑美由紀(札幌)、三浦恭三(小樽)、宮部美紀(石狩)の各氏が出品した。
 同人のうち宇流奈未さんと近宮彦彌さん(旭川)は出品していない。 

 今年も、無料で配っている図録と、実際の会場の展示とは、若干の異同があるため、それについても触れていく。

 冒頭画像のうち、左手前に見えるのは、田中郁子さんの作品で、5点とも「No.54」という題がついている(F100が2点、S100、小品2点)。
 さまざまな色の奔流の上に白い絵の具を重ねて隠すという手法で、動感豊かな抽象絵画をつくっている。

 田中さんは、となりの部屋で開かれている「バックボックス展」にも出品しており、元気なところをみせている。




 奥に、佐々木美枝子さんの絵が並んでいた。
 図録によると、ことし1月2日に死去したとのことだ。

 出品作は「作品A」「作品B」「作品C」のほか、題のない絵が4点。

 右の無題の作品は、クリーム系を基調に黄色やオレンジなどの色が配されている。直線で区切られた部分もあるが、いわゆるカラーフィールドペインティングのシャープな絵画とは異なって、線にゆらぎがある。
 そのため、原色を大胆に用いた絵でも、どぎつさよりもやわらかさが感じられるのだと思う。

 それにしても、これでもう、新作を見ることがないかと思うとさびしい。

 佐々木美枝子さんの画業については、今展覧会の予告記事で振り返っておいたので、ご覧ください。
 1950年代から「ゼロ展」(のち、前衛展と改称)や、当時の日本の美術で大きな位置を占めていた「自由美術協会」(63年に会員)を根城に活動し、北海道抽象派作家協会では事務所を担当していたという。


 小川豊さんは、ひたすら「心のひだ」と題して、雲のような、あるいは、サルノコシカケのような形状を重ねて描いている。
 図録には「インスタレーション」とあるが、実際には100号クラスの絵を5点横に並べており、一般的な絵画の展示と変わりない。

 以前は青系などで描いていたこともあるが、今回は赤系である。
 色が変わっても受ける印象はあまり変わらないのだが、今回は、余白を残さずに描いているタブローがある。筆者は初めて見て、こちらは新鮮だった。
 理由は分からないが、ひだが全面をおおって、いわば「裁ち切り」になっているほうが、画面に広がりを感じるのだ。


 右は今荘さんの「古里」。

 今荘さんの絵はいつも「古里」という題で、こげ茶や抹茶の緑など和風な色面の組み合わせが、日本的な洋画の抽象では一つの達成というべき画面を作り上げている。
 今回はF100が1点、F30が2点、サムホールが4点(ただし図録には「3点」)陳列されていた。 そのうち一番大きなF100号が目を引いた。 というのは、これが横位置だからで、今荘さんの絵では初めて見た。
 画家は80代後半のはずで、なお旺盛な画力に敬意を表したい。

 
 左は、會田さんの「the fissure 2019 spring」。3枚組みの一部。
 図録に「昨年は災害の多い年だった」という文に始まるテキストを寄せ、昨年9月6日の胆振東部地震で震度6弱を体験したことをつづっている。
 だが、こういう時に人間や生き物たちが発揮する治癒のエネルギーは凄い。失ったものは少なくないが壊れたものを治し、次へと向かう種を蒔く。傷跡からは必ず生命の芽が吹き出る。 その予兆と祈りを絵にしていきたい。
 こんな美しい誓いの文章に、筆者ごときが付け加えることは何もない。
 そして、會田さんの絵は、明るさと悲しみを同時に帯びているようで、充分に予兆と祈りを表していると思う。


 三浦恭三さん「リング1」「リング3」「リング2」。 いずれもF60と、図録にはあるが、会場では、この画像のさらに右側に小品2点があり、その下に「リング2」と記された札が貼ってあった。
 三浦さんは、陸上競技のトラックのような形状を、寒色系を主体に描くことが多い。 しかし今回は、トラックを縦長にして、その内側から白い光が放射しているような描写をしている。
 クールだった三浦さんの絵に何やら精神性のようなものを感じ、うなってしまった。


 唯一の立体は田村純也さん。 北海道抽象派作家協会展には大きなインスタレーションを出品していたが、今回は、独立した石彫を8点並べた。

 作品は一列に、台座の上に並べられていて、題は、入り口側の4点が
「有情」「壊」「迷妄」「領」。
 奥の4点は
「cisekitay」「mosir」「ruyanpe」「sanpe」。

 「mosir」は「アイヌモシリ」の「モシリ」だから、土地を意味するアイヌ語だろう。
 ほかの三つもアイヌ語のような語感だが、会場にはとくに注釈はなかった。
 ネット検索すると「チセキタイ」は「玄関」、「ルヤンペ」は「雨、嵐」、「サンペ」は「心臓」らしい。


 このように、いつになく各出品者の作風にあらたな展開がみられた展覧会だったと思う。

 他の作品は次のとおり。
堅田智子 into the sky F30
     at night F30
     mixed feelings F30
     陽(よう) F8
     陽(よう) F6
木内弘子 貴婦人のタンゴ F30
     イブニング・フォールズ F20
     Come Back F30
     悠遠 F6(※図録では「悠・遠」)
     一世一期 F6

後藤和司 軌跡 '19-I S30×4枚組
     軌跡 '19-II S30×4枚組
田中季里 sea and snow sketch 80×190
     black sketch 45×60
    (※このほか「KIRI BLUE」連作8点)
名畑美由紀 紅 F100
      翠 F100
    (※このほか、厚みがあって側面も着彩をほどこした無題の絵画4点)
宮部美紀 流れる F60(水彩。同題2点)
    (※このほか、無題の小品2点)


2019年4月16日(火)~21日(日)午前10時~午後5時(初日午後1時~、最終日~4時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)


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・地下鉄東西線「バスセンター前駅」10番出入り口から約200メートル、徒歩3分

・ジェイアール北海道バス、中央バス「サッポロファクトリー前」から約520メートル、徒歩7分(札幌駅バスターミナル、時計台前などから現金のみ100円)

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