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■中庭展示Vol.12 半谷学 「花降りーFlower Fallー」(2019年4月27日~9月16日、苫小牧)=5月12日(4)

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(承前)

 筆者の怠慢でこれまでちゃんと書いておらず申し訳ないけれど、苫小牧市美術博物館の「中庭展示」シリーズは、とても貴重な展示の舞台だといえる。
 現代アートの作家を継続的に紹介しているスペースというのは、道内ではこれ一つしかないのである。

 見る環境としてこれがベストかどうかはわからない。
 中庭なので、天井があいており、雨に耐えられる立体作品しか展示できない。映像や絵画は難しいだろう。
 しかし、そんなことをさしおいても、前回は藤沢レオさんだし、発表場所としてはきわめて重要であることは間違いない。


 半谷はんがい学さんは、群馬県と帯広を拠点に、精力的な活動を続けている。

 「花降りーFlower Fallー」は、3月に本郷信記念札幌彫刻美術館で開かれた「Post 3.11 in Sapporo 〜沈み行く記憶の淵で」と、基本的にはおなじ趣旨のインスタレーションといっていいと思うが、スポットライトがあたる室内の展示と、太陽光線が指す中庭の展示とでは、受ける印象はかなり異なる。

 さっき「雨」と書いたけれど、縦に長い、外に開かれた空間につるされた傘の柄の数々が、降る雨のようにも見える(筆者が訪れたときは快晴だったので、天気雨というべきか)。


 会場に、半谷さんのテキストが貼ってあった。
 「3.11―」のときと同じものかもしれない。
 だが、かくも美しくて、説得力のある、しかも、作品のすなおな鑑賞を妨げないテキストを作家自身に書かれたら、こちらとしては、付け加えることはほとんどないように思う。 


 苦しみ・悩み・痛みなどには災いの力が潜みますが、それを克服したときにこそ幸いの力に変わります。地球に在る全てのものにとって日々の営みはその繰り返しです。

 街は忘れられた傘や見捨てられた傘で溢あふれています。水が豊かな国であることに感謝をせずに、わずかな時間でさえ雨に濡ぬれたくないために安価な傘を買い、雨が止やむとすぐに捨てます。忘れた傘の在りかを知っていても面倒に感じて引き取りに行きません。そのような傘は大切にされることがないまま廃棄物となって人々の視界から消えていきます。その行方を気に病む人がいなくなってしまえば社会はどうなってしまうのでしょう。すべてのものは地球の瘡蓋(かさぶた)で作られているというのに。
(ルビは筆者が補いました) 


 傘の花が、風とともにくるくると回る。


 
 1点だけ、室内の壁に飾ってあった作品「さしがさばな」。

 花弁の部分は、宮城県気仙沼市で、カキ養殖の妨げになるため駆除されている海藻を利用している。
 半谷さんは2011年の東日本大震災よりも以前から気仙沼の漁師さんから海藻をもらっていたという。


 2階からも中庭が見えるので、訪れた人は、博物館の常設展示にも足を運んでほしい。

 雨のようにくるくるまわる傘の花。
 雨という比喩自体が、「黒い雨」「放射能の雨」という語を思えば、多義的な意味を帯びてくる。


 なお、会期中には関連イベントが予定されているので、市美術博物館のサイトを参照してください。


2019年4月27日(土)~9月16日(月)午前9時半~午後5時(入場は30分前まで)、月曜休み(ゴールデンウイーク中は開館)
苫小牧市美術博物館(末広町3)

特別展会期外 一般300円(240円) 高大生200円(140円) 中学生以下無料
特別展会期中 一般600円(500円) 高大生400円(300円) 中学生以下無料
 ※( )内は10人以上の団体料金


□半谷学 http://www.hangais.com/art.htm


関連記事へのリンク
Post 3.11 in Sapporo 〜沈み行く記憶の淵で (2019年3月)

帯広コンテンポラリーアート2016 ヒト科ヒト属ヒト

防風林アートプロジェクト (2014)

六花ファイル第3回収録作家作品展 「秋の漂い 冬の群れ 半谷学展」 (2013、画像なし)




・道南バス「出光カルチャーパーク」から約320メートル、徒歩5分
(札幌駅バスターミナル、大谷地駅バスターミナルから、都市間高速バスが30分おきに出ています)

・JR苫小牧駅から約1.7キロ、徒歩22分


(この項続く) 

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