戦後日本を代表する前衛美術の潮流として欧米でも知られているのは「具体」と「もの派」ですが、「もの派」の出発点といえる作品「位相―大地」で名高い関根伸夫さんが亡くなったと、5月15日の北海道、読売、毎日、朝日など各紙が伝えています。
以下、毎日新聞から(https://mainichi.jp/articles/20190514/k00/00m/040/202000c)。
前衛的な美術動向「もの派」の代表的作家で国際的にも活躍した美術家の関根伸夫(せきね・のぶお)さんが13日、居住する米国・カリフォルニア州の病院で亡くなった。76歳。体調を崩し、療養していた。
埼玉県大宮市(現さいたま市)生まれ、多摩美術大大学院修了。在学中は現代美術家の斎藤義重と高松次郎に師事した。1968年、神戸須磨離宮公園で開催された現代彫刻展に「位相―大地」を出品。大地を円筒形に掘り、土を穴と同形に固めて隣に置いた作品は自然素材や工業製品をそのまま使う「もの派」の出発点になり、李禹煥さんや菅木志雄さんらと共に動向をリードした。
70年のベネチア・ビエンナーレ国際美術展で日本館代表を務め、欧州に2年間滞在。帰国後、都市空間に彫刻を取り込む環境美術に力を注ぎ、代表作に東京都庁ふれあいモール「水の神殿」(91年)、東京・多磨霊園みたま堂(93年)など。近年、米国で「もの派」の回顧展や関根さんの個展が開かれ、国際的評価が高まっていた。
道内では、北広島市芸術文化ホールの前に「森のゲート」という大作があります。
石を用い、複数の立体からなる大規模なパブリックアートです。
また、札幌市中央区大通西12の第2合同庁舎前に「北のまつり」という作品が設置されています(冒頭画像)。
これは、スマートな造形ですが、あまり「もの派」という感じではありません。
このほか、札幌の豊平公園に「北斗の庭」、岩見沢の鳩が丘記念緑地にも「遺跡回廊」という石の彫刻があるとのことです。
釧路管内鶴居村で創作活動をしているガラス造形作家の嶋崎誠さんは若い頃、関根さんに師事したそうで、2007年に嶋崎さんが道立釧路芸術館で個展を開いた際、関根さんを招いて対談を行っていたとのことです。
筆者は、関根さんの次のことばが好きです。
世界は世界のままあるのに、どうして創造することができようか。ぼくにできるのはせいぜい、ありのままの世界の中でありのままにしていること、それをあざやかに見せることにしかない。
もの派の理論的支柱であった李禹煥 リ ウ ファンさんが引用していたそうです。いかにも、素材をありのままに提示する「もの派」らしいことばだと思います。
ご冥福をお祈りします。