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■松浦進展 “formlessness” (2018年11月23日~12月9日、札幌)

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 筆者はこれまで何度も松浦進さんの作品を見てきた。
 道都大の中島ゼミ展、プラニスホールで開かれた現代アートのグループ展、ト・オン・カフェでの個展。さらには、渋谷でのトーキョーワンダーウオール(これを圧縮したのがJR札幌駅構内のアートボックスの展示)までも見ているのだ。

 にもかかわらず、ブログできちんと紹介したことがいままで一度もない。これには自分でもびっくりした。単なる偶然だと思う。
 しかし、札幌はもちろん、海外でのアーティスト・イン・レジデンスにも赴き、若手版画家では最も活躍が目立つ一人であるだけに、これほど紹介が遅くなってしまったのは、ひとえに筆者の怠慢というしかない。



 先ほど「版画家」と記したが、彼の作品は、シルクスクリーンに手彩色をほどこしたもの。時に、インスタレーションのように、空間に展開していくこともある。
 濃い黒で刷られた人物の顔が特徴的で、いわゆる肖像画とは違う。記号的な面もあるが、漫画とはずいぶん雰囲気が異なる。グラデーションがなく、表情も不明瞭な顔の数々は、松浦作品のトレードマークともいえそうだ。

 今回の個展のメインとなる大作は「カタチのないものをつくり、育み、集め、恐怖し、壊し、そして慈しむ #1~5」と題されている。1170×910センチと記されている。
 同一の版を用い、その上に、チューリップのような花をかき入れたり、黄色の雨を降らせたり、絵によって全く異なる加筆をしている。上部の大きな黒い円がすっかり黄色になってしまった作品もある。版画用の油性インクをナイフで塗りつけることが多いという。
 画面の多くを埋め尽くす、筆触のような模様も、それぞれ異なる彩色がほどこされている。
 ところどころに金色の粉をまいているのは、光悦など琳派の芸術を筆者に連想させた。それらを画面に定着させる意味もあり、彩色の上にニスで仕上げるので、画面には光沢が生じる。



 作品は「ネコナデル」。

 従来は都市風景を画面に取り入れることが多かった松浦さんだが、前回の個展では「癒やし」をテーマにほぼ人物のみの反復描写となり、今回は植物がふんだんに描かれている。
 聞けば、前回の個展の前は、海外での生活や制作ですっかり消耗して、猫をなでる絵を作ったのだそうだ。
 松浦さんの画風は大筋では変化していないものの、以前に比べてとげとげしさのような感じが薄まり、穏やかさが感じられるようになってきたと筆者は思う。
 現代の人間を描く―という視点は変わっていないと思うので、今後とも注目していきたい。


2018年11月23日(金)~12月9日(日)午前11時~午後6時(最終日~5時)、火曜休み
ギャラリー創(札幌市中央区南9西6)

関連記事へのリンク
第46回道都大学中島ゼミ展「版と型をめぐって」(2009)


・市電「山鼻9条」から約110メートル、徒歩2分

・地下鉄南北線「中島公園駅」1番出口から約380メートル、徒歩5分

・ジェイアール北海道バス「循環啓55」「循環啓55」「循環啓65」「循環啓66」で、「南9条西7丁目」降車、約210メートル、徒歩3分
(ギャラリー門馬近くの「旭丘高校前」から「循環啓55」で直行できます)

・じょうてつバス「南9条西11丁目」から約750メートル、徒歩10分。(快速7、快速8は通過します)

・中央バス「中島公園入口」から約650メートル、徒歩8分

※ト・オン・カフェから約500メートル、徒歩7分。鴨々堂から約650メートル、徒歩8分。HOKUBU記念絵画館から約1.2キロ、徒歩16分。ギャラリー犬養から約1.9キロ、徒歩24分



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