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■トピック展「史上初公開!タカシマアイヌを描いた絵巻物」(2018年11月17日〜2019年1月10日)=2019年1月小樽散歩・3

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(承前)

 小樽市総合博物館は、手宮にあって明治期の蒸気機関車を静態保存している本館と、そこから徒歩20分ほど離れた小樽運河沿いにある運河館の、二つの施設からなる。
 運河館は、明治時代の石造倉庫を再利用しており、建物自体が、博物館収蔵品なみの価値を有するといいたくなる、重厚な建築だ。 

 あるとき、たまたま北海道新聞の小樽・後志版を見て、アイヌ民族を描いた珍しい絵巻物を展示していることを知って、四十数年ぶりにこの建物に足を運んだ。

 この絵巻物は、江戸期の砲術師井上貫流左衛門かんりゅうざえもん(元文元年~文化9年)が1808年、御鉄砲方与力格として蝦夷地勤務を命じられた際に、高島のアイヌ民族の様子を絵と文で紹介したもの。
 「アイヌ」ではなく「アイノ」と表記され、前期は13、後期は9の場面を展示している。
 筆者が見た後期は
アツシ織図
アイノ屋形之図
子供便秘治療之図
メノコ小便之図
車櫂之図
など。

 いくつかは、題を見ただけで、どうしてこんな場面を選んだのか理解に苦しんでしまう。おもしろいけど。
 アイヌが食べていたウニ2種を観察した場面もある。

 資料的な価値はあるだろうが、砲術師が描いたものなので、絵画としてはしろうとの域を出ない。

 ただし、アイヌ民族を上から目線で見ているときめつけることもできない。「車櫂之図」では、彼らが舟をこぐ際の工夫を見て「日本にはない」と驚いている。 

 なお「タカシマ」は、小樽の地名である。
 小樽は決して広い市ではないが、かつては小樽市のほか、小樽郡、高島郡、忍路おしょろ郡と三つの郡に分かれていた。ニシン漁で栄えていたことが、松浦武四郎による明治初期の郡の区分けに影響したのだろう。


 さて、この絵巻物以外は、おおむねどこの市にもある博物館や郷土資料館と同じく、マチの歩みを資料によって見せている。
 ただし、なにぶん大正期から戦前にかけて経済的な繁栄を謳歌した都市であるので、まず近代の展示から始まり、縄文土器や自然史(昆虫標本や動物の剝製)は後半の順路にまわしているのが小樽らしい。

 美術ファンにおすすめなのは、京都派の画家久保田金遷(1875年生まれ、歿年不詳)が留萌管内小平町のニシン漁に取材した「鰊ニシン盛業屛風びょうぶ」だろう。
 六曲一双の屛風二つに、網入れ、網起こし、鰊つぶしといった、海辺での作業全般を克明に描いたものとしてこれ以上の資料はないであろう。左に174人、右に168人が描かれた一大パノラマである。



 画像は、筆者が働き始めた頃は会社でふつうに使っていた電話機で、「ガラ電」といっていた。
 受話器を上げて右側のハンドルを回すと、相手の電話が鳴るというもので、1対1でしか使えないものである。

 そうか~。
 もう博物館入りする代物になってしまったか…。

(たしかに最近、現役で使っているところを、見たことがない) 


 あと、館の受付で『小樽散歩案内』という本を初めて見つけた。
 本体1300円とあるから、税込みだと1404円になるはずだが、1400円で買えた。
 札幌への帰り、バスの中で読み始めたが、町歩きが好きな人間にとって、こんなにおもしろい本はないと思う。


2018年11月17日(土)〜2019年1月10日(木)午前9時半~午後5時
小樽市総合博物館運河館(色内2)

(この項続く)

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